スペインのマドリード市の水研究所IMDEAの水経済グループコーディネーターは、iagua誌とのインタビューで、ラテンアメリカの都市が抱える問題点の多くは、上下水道サービス関係だと語った。インタビューで述べられた要旨は、以下の通り。
中南米では、水不足の地域もあれば洪水に悩まされる地域もあるが、問題は水があるかないかではなく、また人口の都市への集中化でもなく、旱魃や洪水にどのように対応するかや、都市への集中化への対処方法が十分でない点にある。その意味で、今後注力すべき分野として以下が考えられている。
- 水域毎の管理
- 上下水サービスを評価及びモニタリングするシステムの確立
- 住民の参加体制の強化
- 官民提携による水インフラやサービスへのファイナンスの強化
- 明確な法規制定と規制機関の役割の強化
- 様々なレベルでのイノベーションの奨励
- 情報システムの改善
- 水分野に携わる従業員の能力強化
水は国の発展の制限要素となる場合もあるが、経済発展の為のチャンスでもある。昨今、回復力(レジリエンス)という概念がよく取り沙汰されているが、これは変化に対する抵抗力というよりも、様々な分野における多様性を維持することで得られるものと考える。
ラテンアメリカは、中国の経済停滞や資源価格低迷により経済成長に翳りが見え、2016年の経済成長は減少する見込みとなっている。この為、公共投資を減らす国が多いが、ラテンアメリカ経済は80年代や90年代の経済危機を乗り越えて近年強化されており、金融市場や資本市場は大きく成長している。ただし問題は資金があるかないなではなく、限られた資金を、優先度をつけた使途にうまく配分する政策に欠けている点にある。
水分野においては、新しい技術の開発とその適用が重要であるが、ラテンアメリカにおいては、技術が適切に適用されていない例が多く見られる。スペインは、旱魃対策や河川の回復、淡水化、排水の再利用の経験が豊富であるが、スペインにもまだ解決すべき水に関する問題がある。ラテンアメリカにとってはスペインは、モデルというよりも失敗例も含めた参考例として活用出来るだろう。