米アリゾナ州、直接飲用再生水規制の策定へ

米アリゾナ州環境質局(Arizona Department of Environmental Quality)は2017年1月下旬、廃水を再処理し飲料水に活用する直接飲用再生水規制を年内に法制化する方針を明らかにした。同州では1982年に廃水規制が制定され、同規制では直接飲用再生水の利用は禁止されていた。しかし、技術革新と安全対策の改善に伴い水質が保証されたことで、直接飲用再生水の利用が可能となり、今回新規制を策定するに至った。関係者の話によると、今後6か月以内に直接飲用再生水の利用に向けた規制草案が提案される可能性が高いという。

アリゾナ州政府職員によると、水源や涵養水の将来利用が限られているプレスコット・バレーや山岳地帯または人口過疎地などを対象として再生水の直接飲用利用を開始する可能性が高く、実現化には少なくとも2、3年かかるとしている。また、フェニックス地域では、水道供給事業者であるSalt River Projectが供給する水道水へのアクセスが限定的である同地域西部に位置するウエストバレーの地方自治体が、再生水の直接飲用利用に関心を示している。

再生水を直接飲用として利用するには、従来の下水処理施設に加えて、逆浸透法(RO)などの技術的に更に高度な処理施設にて、飲用水として利用できる水質へ再生水を処理する。一方、直接飲用再生水とは反対に、廃水処理水を地下帯水層へ直接注入し、飲用水として汲み上げる間接的飲用水の利用が、アリゾナ州では既に実施されている。現在、ツーソン地域におけるピマ郡廃水処理施設2か所から処理された大量の再生水がロウワー・サンタ・クルーズ川へ放出されている。

アリゾナ州では、直接飲用再生水の利用を巡る反発も過去に見受けられた。再生水の直接飲用利用は、人間の健康へ影響を及ぼすと、一部の環境保護論者が懸念を示していた。しかし最近では、環境保護団体Western Resource Advocatesが、直接飲用再生水の利用は、同州が飲用水として従来取水してきたコロラド川の将来的な水不足を軽減する解決策の一つであると捉えており、直接飲用再生水の利用に対する考え方が軟化してきた。直接飲用再生水は、廃水再生水を地下帯水層への注入、汲み上げる必要がないことから、コスト削減につながると、同環境保護団体は主張している。

直接飲用再生水は、米国南西部に位置する他の州や都市でも注目されている。壊滅的な干ばつを受けたテキサス州ビッグスプリングでは、2014年に直接飲用再生水を生成する廃水処理施設が稼働開始した。同州ウィチタ・フォールズでも、2015年の豪雨により貯水池が満水となるまでの当分の間、同様の廃水処理施設が稼働していた。ニューメキシコ州クラウドクロフトでは、直接飲用再生水を生成する廃水処理施設が建設され、稼働に向けての準備が現在進められている。カリフォルニア州では、州政府(州水資源管理委員会)が昨年、適切に運用すれば直接飲用再生水は公共の健康を保護するに十分な信頼性の高い水資源となる潜在性を有すると結論付けた報告書を発表した。これを受けて、同州政府は直接飲用再生水の利用に向けた規制策定を計画している。カリフォルニア州の環境保護論者の多くは、コストが高い海水淡水化プラントを建設する代替手段として、直接飲用再生水の利用を推進している

このように多くの州にて直接飲用再生水の利用が検討されている主な背景には、近年の深刻な水不足が挙げられる。しかし、アリゾナ州で直接飲用再生水の利用が現在検討されている最大の要因には、2001年に策定された時代遅れの包括的な水再利用規則を同州環境質局が現在改訂を進めており、そのタイミングに乗じたものである、との関係者の声も聞かれる。抜本的な規制改正が実施された場合、次の改正時期まで長年かかる可能性が高い。そのため、水道供給事業者は、現在の規制改正のタイミングに併せて、直接飲用再生水の利用が承認されることに期待を寄せている。

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