iagua紙主催のスペインの水事業専門家によるフォーラムで、汚水の再生水の使用に関する議論が行われた。現在、欧州で再利用される汚水水の3分の1はスペインで利用されており、スペインでは水の再利用技術が進んでいるのに対し、それに関する法整備が追いついておらず、新しい技術の開発と適用がしにくい状況となっている点が指摘されている。
再生水は、一定のの基準を満たした上で、農業用、都市管理用、工業用、環境保護用に使用するものであるが、水が豊富な欧州北部よりも、スペインなどの乾燥気候の欧州南部の方が需要が多い。欧州での再生水利用量は2025年には年間3222億立方メガメートルに達し、そのうち1200億立方メガメートルがスペインで使われる見込みとなっている。スペインでは現在2000ヶ所の浄水場で年間4000立方ヘクトメートルの水が処理されているが、このうち再利用されているのは年間10-13%の400-500立方ヘクトメートルと見積もられている。マドリード市では2001年から、浄水場で浄化された水が公園の散水に使われ始め、昨年は、再生水6立方ヘクトメートルの75%が150kmの範囲の公園に散水され、25%が道路の洗浄に使われた。
再生水は工業用としても需要が高いが、2007年の国王令No.1620/2007で使用が制限されており、また衛生当局による再生水の質の規制が厳しく、メンブランやウルトラフィルトレーション、逆浸透膜による再処理により、飲料水以上の質が要請されており、再生水の供給量は多いのに、需要側の体制が整っていないのが現状となっている。
一方農業・食糧・環境省の2012年のプレゼンテーションでは、再生水の農業での使用率を2008年の0.3%から2021年には12%に引き上げることが提案されている。また国王令No.1620/2007の改正も提案されている。例えば再生水の質の分析頻度が用途別になっておらず、特に農業分野では分析コストが非常に高いものとなっており、また水質基準も、例えば濁度など、飲料水用としても厳しい基準値が設けられている点が指摘されている。またフォーラムでは、再生水の使用と質を規定する国王令だけでなく、再生水の使用にインセンティブを与えて奨励する法的枠組みの策定も必要である点が、指摘された。
なお欧州連合が2016年の7月に加盟国の500の官公庁及び250の民間企業に対して行ったアンケート調査では、再生水の質に対するネガティブな印象、再生水の利点とリスクに関する情報不足、一般的な法的枠組みがない点、再生水をプロセスに利用した食品の輸出における障壁が、問題点として挙げられており、この分野で進んでいるスペインからの欧州連合への情報発信の必要性が認識された。