EU飲料水指令の改正に向けたロードマップを欧州委員会が公表、意見を募る

欧州委員会は2017年2月28日、EU飲料水指令(98/83/EC)の改正法案の年内提出に向けて、その概要や手順を説明するロードマップを公表した(下記URLから閲覧可能)。3月28日までの4週間、意見を受け付ける。ロードマップは、欧州委員会が計画する新たな政策や方針、既存政策の見直しなどに関して最初に示す予備説明であり、利害関係者に初期段階で情報を提供し、反応を得ることを可能とするものである。
http://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/initiatives/ares-2017-1061434_en

この1998年制定の指令について欧州委員会は2016年にREFIT(現時点での法の合目的性を評価しつつ、簡素・効率化の余地を特定する見直し事業)を行い、“目的を十分果たしており今後も存続させる意義がある”と評価しつつ、次のような改善の余地を指摘した。

(1) 検査項目や水質基準値が制定以来、更新されていない。もはや不要なものがあったり、最新の科学的知見や汚染傾向を十分に反映できていない危険性がある。

(2) 予防的な安全計画や潜在的リスク評価をほとんど想定していない。

(3) 水供給の定義と消費者への適切かつ最新の情報提供に関する規定が不明確。

(4) 飲料水と接する製品・素材(配管など)の許認可を各国に任せているため、これらを複数の国で販売しようとすれば、各国から許認可を個別に取得する必要があり、余計な費用がかかる上に、域内市場における物の自由な流通の妨げとなっている。

(5) 安全な飲料水へのアクセス権を全市民に保証する規定が無い。

ロードマップは、これらに対応すべく、主に次の点について複数のオプションを検討するとしている。

(1) 検査項目と基準値の更新

(2) 飲料水汚染リスクへの対応としてのリスクベース評価の促進と安全計画の策定

(3) 最新(スマート)情報技術を使った飲料水消費者への情報提供の確保

(4) 飲料水と接する製品・素材に関するEU共通の基準の提案

(5) 飲料水の持続可能な管理および利用可能性の改善

 

欧州委員会の委託を受けて同指令のREFITに協力したコンサルティング会社EcorysのKlaassens氏は、(4)について、そうした製品・素材の大半がEU域外から輸入されているため、多額の費用がかかる上、監視が難しいと指摘した。また(5)については、飲料水指令のような実務法で水へのアクセス権を規定すべきか定かでないとした。

現行指令は飲料水について48の検査項目(アルミや大腸菌のレベルを含む)を定めており、各国が3年毎に測定して欧州委員会に報告している。改正に関する情報は欧州委員会の下記ウェブサイトで閲覧可能。
http://ec.europa.eu/environment/water/water-drink/review_en.html

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