ドイツの「汚泥リサイクルの新たなルールを定める政令(汚泥令)[1]」が2017年10月3日施行された。汚泥令は、ドイツの地方自治体の下水汚泥から有価物を取り出しリサイクルを推進することを目的とし、汚泥からリンをいかに回収しつつ、同時に有害物質を削減できるかについてのルールを定めている。リンを回収し肥料として活用する観点から、移行期間の経過後、大規模な下水処理場に対し、汚泥や汚泥焼却灰からリンを回収するよう義務づける。そのため、下水処理場を改修するのに必要な法的根拠を作る。この改修には高額の予算がかかり、数年間かかる可能性もある。
ドイツ連邦環境省によると、同国では現在、ほとんどリンは回収されていない。そのため、リン回収工法の開発と許認可手続きの期間を踏まえ、長めの経過期間を置くこととした。それゆえ、本政令が施行されてからようやく12年たった後に、リン回収が義務化され、それと同時に肥料として汚泥を直接使用するのが禁止される。汚泥令の対象施設は、次のとおりである。
- 利用する住民人口が10万人以上の施設⇒政令施行後12年たった2029年から
- 同5万人以上の施設⇒同15年たった2032年から
本政令では、リン回収のために採用すべき特定のテクノロジーを指定していない。したがって同省によると、革新的なプロセスを活用したり、開発する十分な余地がある。汚泥焼却灰や、発生したヘドロ、あるいは廃水から直接、リンを回収するという方法もありうる。リン含有物がとりわけ少ない汚泥(汚泥の乾燥重量kgあたりリン含有量が20g未満)は、本政令の例外である。
ドイツの地方自治体は現在、下水汚泥に含まれるリンを回収しないまま、汚泥のおよそ3分の2を焼却処理している。かろうじて残りの3分の1が、農業や景観整備のための堆肥として、直接利用されているのが現状である。リンは、作物の肥料として活用可能である。リン酸肥料の原料は希少になってきているが、リンをリサイクルすることで代替できる。ドイツは、他のEU加盟国と同様に、無機質肥料の供給を完全に輸入に依存している。しかも、そのほとんどを政治的に不安定な地域に頼っている。いっぽうドイツでは、下水処理によって年間約180万トンの汚泥が発生している。
EnviXコメント
ドイツでの下水汚泥の処理状況をみると、ベルリンやハンブルクといった大都市では焼却が100%である(下図)。その一方で、メクレンブルク=フォアポンメルン州(Meckl-Vorpommern)やシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州(Schleswig-Holstein)では農業用に利用されている割合が圧倒的に高いが、上でも述べたように汚泥令の施行とともに肥料としての直接利用が禁止されるため、これらの州では別の用途が今後模索されるものと見込まれる。
図 ドイツでの下水汚泥の処理、利用先の内訳
(出典:Sewage sludge application in German Agriculture – state and perspective[2])
汚泥からリンを回収する技術についてはまだ推奨されたものはないため、今後はその動向に目を向けることで、ドイツでの自社技術の売り込みやPRに活かせるだろう。2029年の義務化まではまだ十分な猶予があるため、いまから準備することで、ドイツの汚泥処理市場への活路を見出すことができる。
[1] https://www.bgbl.de/xaver/bgbl/start.xav?startbk=Bundesanzeiger_BGBl&jumpTo=bgbl117s3465.pdf#__bgbl__%2F%2F*%5B%40attr_id%3D%27bgbl117s3465.pdf%27%5D__1518050921573
[2] http://www.ymparisto.fi/download/noname/%7B23B7D96B-D493-4E03-AD6C-A5C45CEDB792%7D/117961