2016年に建設されたアウディのメキシコのサンホセ工場は、製造過程で排出される汚水を100%回収し、汚水処理して再使用するシステムの導入により、プレミアム自動車メーカーとして世界初の排水ゼロ工場となったと、2018年8月31日、アウディが発表した。
同工場では、塗装工程から漏れテスト工程まで、全工程で水を使用している。汚水は、まず物理・化学処理(下図①)で中和され、塗装過程で排出される重金属が除去される。その後、他の工程からの排水と一緒に、除濁と生物処理過程(下図②)を経て有機物質が除去され、最後に限外ろ過(UF)(下図③)と逆浸透(RO)膜(下図④)で細菌や塩分が取り除かれる。衛生的に完全に浄化された高品質の処理水は、工場内で再利用され、水域には排水されない。RO膜プロセスから出る濃縮物は蒸発し、脱水された固形粒子は廃棄物として処理される。
図 アウディのメキシコ・サンホセ工場全景
(出典:アウディ ホームページ[1])
アウディでは、カーボンニュートラルと排水ゼロ自動車を製造することを企業のビジョンとしており、サンホセ工場でその大きな目標を達成した、また自動車メーカーとして環境や水などの貴重な資源に配慮することを自社に義務付けており、この汚水処理システムによりメキシコの水不足対策に大きく貢献すると、アウディの製造・ロジスティック顧問は述べている。
同工場で処理された産業排水は製造工場で再使用される他、敷地内の緑地の灌漑にも使われ、地下水に浸透する。この革新的な技術により、工場での水使用量の4分の1に相当する年間10万m3の水が節約され、長期的には年間30万m3以上の節水が目標となっている。
アウディの環境保護課長は、この新しい汚水処理システムでアウディは水の自給サイクルを作り上げ、2025年末までに環境インパクトを対2010年比35%削減するという目標達成に貢献すると述べている。同工場ではこの他に地下水の使用削減にも努め、4月から9月の6ヵ月間の雨季に雨水を貯める容量24万m3の貯水タンクも設置した。溜まった雨水は全て、生産工程で使用される。また10万本の木を植林し、近隣の市町村の100ヘクタールの土地に2万5000個の浸透井を作り、年間37万5000 m3の水を地下水に戻している。
[1] https://www.audi-mediacenter.com/en/press-releases/pioneering-work-audi-mexico-produces-completely-without-wastewater-10618