ドイツの連邦環境、農務両省が2019年8月21日、地下水保全を確実に実施するため、ドイツ肥料令の厳正な改正で合意した。環境省によると、地下水を保全するには、あまりにも多くの硝酸塩が肥料を通じて土壌に達するのを防ぐことが肝要である。肥料は必要に応じて植物に与えなければならない。
改正案のあらましは次のとおりである。
- 実際に施肥した肥料の数量を記録する義務を農業者に課す。これによって現在、窒素とリン酸塩またはリンを対象に義務づけている栄養素比較表の作成義務にとって代える。
- 草地の最もストレスがかかっている地域での施肥禁止期間(主要穀物の収穫から施肥してよい時期までの期間;通常は翌年の1月31日まで)を最大4週間延長する。また、有蹄類、偶蹄類の動物やコンポストに由来する固形肥料の施肥禁止期間(12月15日から翌年の1月15日まで)を延長する。
- 水源地近くの斜度5%以上の傾斜地に施肥する場合の特別なガイドラインを定める。
この合意を受け、環境、農務両大臣は8月28日、欧州委員会環境総局のK・ヴェッラ委員に対し、ドイツ連邦政府の肥料令改正案を提出した。
バックグラウンド
欧州司法裁判所は2018年7月21日、ドイツがEU硝酸塩指令に違反しているとの判決を下した。ドイツが2014年9月時点で、農業に由来する硝酸塩による汚染から地下水を保全するためにこれまで講じてきた措置が不十分であることが明らかなうえに、なんら追加の措置も、措置の強化策も講じていない点が違反とされた。欧州委員会はこの判決にのっとり、2017年ドイツ肥料令を改正する必要性を提起した。そのうえで欧州委員会は、ドイツがまだ判決を実行に移すために必要な措置を講じていない、として催告書を発出、2段階からなる違反訴追手続きの第2弾を発動していた。
ドイツ政府は今回の肥料令改正により、EU硝酸塩指令違反から発生し得る罰金の支払いを回避したい意向である。