P4G、ベトナムの上水道供給サービスの運用最適化には、更なる投資が必要と結論

世界各国の持続可能な発展と環境に配慮した成長を目指す官民イニシアティブP4G(Partnering for Green Growth and the Global Goals 2030)は2019年7月5日、ベトナムにおける安全な水供給インフラ整備への投資状況を分析した報告書を発表した。その結果、ベトナムの上水道供給サービスの運用を最適化するには、地域水道業者79社による投資が更に必要であると結論付けた。

P4Gは今回、ベトナム水道事業者4社による上水道供給サービスの運用状況を調査、分析した報告書「ベトナムにおける収益に結びつかない水やエネルギーの損失量を削減する一体化したファイナンスモデル(Blended Finance Model to Reduce Non-Revenue Water and Energy Consumption in Vietnam)」を発行した[1]。その結果、公的資金やローン、国際機関による補助金の活用ではなく、従来のファイナンシングスキームを通じて、上水道システムの圧力管理技術へ投資すれば、今後5年間でエネルギーコストの削減や漏水の防止が可能であると結論付けた。配水管網の圧力管理を行うことで、漏水や水道管の破裂を防止するとともに修理や維持に係るコストを削減できるほか、結果として顧客の苦情や電話による問い合わせを低減することができる。

ベトナムは2025年までに都市部に居住する全ての住民に対してクリーンな水道水を100%提供する目標を掲げている。同目標を達成するためには、国内の水道事業者79社が運用効率化を図るためにインフラや技術に対して追加投資を行う必要がある。特に2025年までに水道供給システムの無収水量(NRW:Non-Revenue Water)を現行水準の30%から15%へ低減することを焦点としている(下表;2009年公布の首相決定1929/QD-TTgに基づく)。無収水量とは、給水量のうち料金徴収の対象とならない水量を指し、仮に無収水量が削減できれば収入拡大につながるほか、運用コストを削減することができる。世界銀行(World Bank)の積算によると、開発途上国における商業用顧客への水損失量は年間26億米ドル(約2802億円)規模に匹敵する。

目標 都市分類 2015 2020 2025
浄水供給カバー率(%) カテゴリーIII以上 90 95 100
カテゴリーIV 70
カテゴリーV 50 80
浄水供給量(リットル/人/日) カテゴリーIII以上 120 120 120
カテゴリーIV 100
カテゴリーV
NRW(%) カテゴリーIII以上 < 25 < 18 < 15
カテゴリーIV
カテゴリーV < 30 < 25

今回の調査は、P4Gによる財政支援を受けて、ベトナム上下水道協会(Vietnam Water Supply and Sewage Association)、デンマークに本社を構える世界的な水企業Grundfos、デンマーク開発途上国投資基金(Danish Investment Fund for Developing Countries)とのパートナーシップを通じて、社会整備・持続可能の変革に向けたアジア社会協会(ASSIST:Asia Society for Social Improvement and Sustainable Transformation)が実施した。ベトナムは、P4Gに参画するパートナー国のうちの一つである。

P4Gは2018年に設立され、国連が掲げる持続可能目標(SDG:Sustainable Development Goals)やパリ協定(気候変動)(Paris Climate Agreement)の達成に向けて世界的な官民パートナーシップに対して資金援助を行う団体である。P4Gは、ベトナムに加えて、韓国、メキシコ、ケニア、デンマークやオランダなどの9カ国に上るパートナー国を始め、中国系Eコマース企業Alibaba、デンマーク系水ベンダGrundfos、ベトナム商工業会議所(Vietnam Chamber of Commerce and Industry)などのビジネスパートナー10社、IFC(International Finance Corporation)、World Economic ForumやWorld Researches Instituteなどの6カ所の非営利/国際機関、Climate Policy Initiative、Danish Refugee Councilなどの市民社会団体5組織により構成されている。

[1] 報告書は以下よりダウンロード可能。
https://p4gpartnerships.org/sites/default/files/2019-05/P4G_Blended%20Finance%20Model_Final%20report_20190423.pdf

タグ「」の記事:

2020年7月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中のマイクロプラスチックの定義を発表
2020年7月9日
米EPA、飲料水中の過塩素酸塩を規制しない方針を最終決定
2020年5月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中の六価クロムの新汚染基準策定に向けたワークショップを開催
2020年3月24日
米EPA、飲料水中のPFOAとPFOSの規制を予備決定
2020年2月23日
米州水規制規制機関協会ADERASA、上下水法規に関する第12回イベロアメリカ・フォーラム開催