2014年9月7日から10日にかけて米テキサス州ダラスでひらかれたWateReuseシンポジウムで、水不足に悩むカリフォルニアをはじめとする南西部諸州の自治体の代表から、下水の飲用への再利用を強く志向しているとの発言があいついだ。水不足が特に深刻なカリフォルニア州南部の自治体では、処理済の下水を地下の帯水層に注入するなどの間接再利用ばかりでなく、そのまま飲用水として上水道で供給する直接再利用までが検討の対象となっている。
ロサンゼルス市の水リサイクル計画
ロサンゼルス市水道・電力局(LADWP)は、下水を飲用水の基準を満たすレベルにまで浄化して帯水層に注入する計画の評価をおこなっているところである。この計画を実施するには、初期費用が4億ドル(約440億円)、保守運営費用が年間1900万ドル(約21億円)かかる。計画の詳細はまだ詰めの段階だが、2022年までに稼働を開始することを目標にしている。
同市が直接再利用ではなく帯水層への注入によってリサイクルする間接再利用の方式を採用したのにはいくつか理由があるが、そのうちのひとつに、2009年にはじまった雨水捕捉プログラムの一環として地下水関連のインフラがすでに整備されていることが挙げられている。
サンディエゴ市は直接再利用も視野に
サンディエゴ市は地理的な理由から、地下への注入による間接再利用には向いていないが、処理済の下水を飲用に再利用することのメリットについて市民を納得させる取組を強力に進めている。
同市の水道事業を運営しているサンディエゴ市公共ユーティリティ局は、3年前から水リサイクルの実証プロジェクトを実施している。しかし、これはまだ飲用水としての直接再利用までには至っておらず、飲用水基準にまで浄化された水は農業用水や産業用水として売られている。同時にまたこのプロジェクトは、リサイクル水についてのパブリック・アクセプタンスを得るためのキャンペーンにも利用されている。
州も直接再利用の基準づくりに動きはじめる
カリフォルニア州には飲用のための水リサイクルに関する規制はないが、州当局はすでに専門家パネルを立ち上げて、直接再利用の基準づくりに必要な事項の検討をはじめている。この専門家パネルは、提言などを盛り込んだ報告書案を2016年6月に、また最終報告書を2017年12月に公表することになっている。