2014年11月18日にチリのコキンボ州生産開発公社が主催した「水資源の持続可能な開発に向けた国際セミナー」で、同州で淡水化プラントか排水再利用プラントを建設した場合の、経済面、社会面、環境面からの比較調査結果が報告された。調査は、スペインのAgua Advice社が、「競争力強化のためのイノベーション基金(FIC)」の融資で実施したもので、排水再利用率がそれぞれ80%、30%に達しているイスラエルとスペインの経験を参考にしている。
コスト面では、淡水化プラントは、500リットル/秒の場合は初期投資に7560万米ドル(以下ドル)、1000リットル/秒の場合は1.3億ドルかかるのに対し、すでに一次処理設備を備えた500リットル/秒の排水再利用プラントの場合は、二次処理設備への投資が2900万ドル、大腸菌のない水にする三次処理への投資が2270万ドル、合計5170万ドルとなる。
稼動コストは、500リットル/秒の淡水化プラントの場合、海水をコンセッションにより購入するとして、kW/hあたり0.15ドルの電力コストを考慮すると、立法メートルあたり1.66ドルとなり、排水再利用プラントは、高度な技術を使用したプラントの場合、立法メートルあたり1.08ドル、従来型のプラントで0.87ドルとなる。高度な技術による排水再利用プラントは、大腸菌が皆無でどの用途にも使えるものではあるが、処理されたものであっても排水は心理的に衛生用には使い難く、これがネックとなる。従来型のプラントの水は、細菌の定着率が低く、都市サービス、作物の灌漑、工業生産・洗浄要旨、ゴルフ場の灌漑に使える。
報告された結論は、排水再利用プラントの方がコストは安いが用途に制限があるのに対し、淡水化プラントは初期投資と生産コストは高いが、どの用途にも使えることを考慮し、どちらかを排除するものではなく、500リットル/秒の排水再利用プラント2基または、500秒/リットルの排水処理プラント1基と淡水化プラント1基の建設が妥当ではないかというものとなっている。また、調査を実施した人口60万人のコキンボ州の都市圏の状況を考慮すると、排水再利用プラントの場合は、コンパクトで簡素かつコストも低い、従来型のものが妥当であろうと結論づけている。
現在チリでは、アントファガスタやコピアポ地域で、逆浸透膜による淡水化プラントが稼動しており、塩分が99%除去された、どの用途にも使える高質の水が生産されている。いっぽう、排水は養分に富んでいるため、処理の度合いにより、農業用水または工業用水として使用が可能である。
*1米ドル=約120円