チリの下院は、BHP Billiton、Anglo American、Rio Tintoなど大手を含む鉱山会社に対して国内のすべての銅鉱山の操業に海水淡水化で得た脱塩水の使用を義務づける法案を審議している。この法案は2014年に提案されたもので、毎秒150リットルを超える水を消費する鉱山にのみ脱塩水の使用義務が適用される内容になっている*1。
多くの鉱山が具体的計画――Anglo Americanは淡水化施設の操業を開始
こうした動きをうけて、Freeport-McMoRanのEl Abra鉱山や、同社が最近まで所有していたCandelaria鉱山、それに国営の巨大な銅鉱山会社Codelcoの一部門であるRadomiro TomicとChuquicamataなど、多くの鉱山が淡水化施設の導入をすでに計画している。また、鉱業の大手、Rio TintoとBHP Billitonは、海水を淡水化して1万フィートの高地にある両社共同所有のEscondida銅鉱山までポンプで汲み上げる30億ドル(約3500億円)規模のプロジェクトにとりかかることを、2014年に発表している。
しかし、脱塩水の利用で最も先を行くのがAnglo Americanで、同社は2014年11月、Mantoverde鉱山の用水を確保するために、この種のものとしてはチリで初となる淡水化プラントの操業を開始した。同鉱山ではそれまで、アタカマ地方の住民のおもな水源であるCopiapo川から淡水を得て操業していたが、現在では、おもに海水を淡水化して利用している。海水は300メートルほど沖合の取水塔で取り入れ、そこで塩分等を濾過するなどして淡水化している。こうして得た淡水は、露天掘り鉱、砕石プラント、および酸化鉱処理施設から成るMantoverde鉱山の操業に使われている。
また、2013年6月には、当時Freeport-McMoRanが所有していたCandelaria鉱山(現在はLundin Miningが所有)が、アタカマ州カルデラ市のPunta Padrones地区で海水淡水化プラントの操業を開始した。そこで得た淡水は、80キロメートルのパイプラインを通して毎秒500リットルのペースで鉱山に供給されている。
水は世界の鉱業でも大きな課題
水をいかによく節約し、管理するか、あるいはいかによい方法で手に入れるかについて関心をもっているのは、チリの鉱山会社にかぎったことではない。この問題については、2011年以来、世界中の企業が840億ドル(約9兆9000億円)を超える資金を投じてきた。2015年には、鉱山会社だけでも、世界全体で120億ドル(約1兆4000億円)を水の問題に費やするものと見られている。
*1 EWBJ49号に関連記事有り「チリ、鉱山開発に脱塩水の使用を義務づける法案が提出される」