インド、繊維業を対象とした排水基準強化案に対して繊維省が反発――ZLD技術の導入義務化をめぐり対立

インド環境森林気候変動省(MoEF、以下環境省と略)が提案した繊維業界を対象とした排水基準強化の動きに対して、繊維省(Ministry of Textiles)が反対している。2016年1月に現地で報じられたところによると、繊維省は環境省に書簡を送り、「提案された排水規制強化案はあまりに厳しすぎ、これが実施されれば多くの工場が閉鎖され、多くの労働者が職を失う」として懸念を表明したという。また、繊維業界も懸念を抱いており、環境省に対して見直しを要求している。

繊維業界を対象とした上述の排水基準案は、以下のURLより閲覧できる。
http://www.moef.gov.in/sites/default/files/Effluents%20from%20Textile%202.12.15.PDF

環境省による繊維産業の排水基準案

環境省は、2015年10月~11月にかけて、複数の産業種に対する排出基準改正に向けた規則案を公表し、意見募集を実施した。このうち、繊維業を対象とする排水基準案において、環境省は“1日当たりの排水量が2万5000リットルを超える繊維工場”に対して、廃液排出ゼロ(ZLD)技術の採用を義務付ける方針を打ち出した。しかし、これを実現するためには、繊維工場に大きな投資が求められるため、業界からは負担増を懸念する声が上がっている

インドの繊維産業

インドの繊維産業における労働人口は、農業に次ぐ第2位の規模であり、繊維製品の輸出額は国全体の14%を占めている。その規模の大きさゆえ、繊維産業は同国における主要な汚染源のひとつとなっており、2011年にはグジャラート州およびタミルナドゥ州で、また2015年にはラジャスタン州で、裁判所命令により多くの繊維工場が閉鎖に追い込まれた。今回の環境省による規制強化提案は、繊維工場による水質汚染を懸念してのものであるが、近年同国の繊維業界は、国際マーケットにおいてバングラデシュやベトナムといった新興国との競争にさらされており、環境対策による負担増が受け入れがたい状況にある。

なお、2007年にインド中央公害管理委員会(CPCB)が発表した報告書*1によると、国内の繊維関連工場の数は下図の通りで、タミル・ナドゥ州、グジャラート州、パンジャブ州、マハラシュトラ州に集中していることが分かる。

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図 インド各州における繊維産業関連工場の数
(出典:Advance Methods for Treatment of Textile Industry Effluentsよりエンヴィックス作成)

*1 http://cpcb.nic.in/newitems/27.pdf

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