中国上海市の財政局、発展改革委員会、水道事業局は、「上海市汚水処理費徴収・使用管理実施弁法*1」(以、本弁法)を公布し、同弁法が2016年3月1日より施行された。本弁法は、国の「水汚染防止法」および「汚水処理費の徴収・使用管理弁法」などの関連する法律法規に基づき、上海市における汚水処理費の徴収や使用に関する管理基準を設け、水汚染対策を強化するために策定されたものである。同弁法では、排水費の名称が汚水処理費へ変更された。同市の汚水処理費制度の改正では、変更されるものと変更されないものがそれぞれ3点ある。
変更点
(1) 名称
これまで排水事業者および個人から徴収していた「排水費」の名称を、「汚水処理費」に変更する。
(2) 料金徴収における主体
これまでの企業に代わって、政府が徴収を行う。汚水処理費は政府の非税収入に属し、全額が上海市の地方国庫に納められる。
(3) 使用管理方法
企業が自ら行っていた徴収や支払いは、「収支2つのライン*2」による管理に変更される。徴収した汚水処理費は、政府性基金(日本の特別会計に相当)の予算管理に組み込まれ、都市の汚水処理施設の正常な運用が汚水処理費により保障できない場合には、同級の財政部門が補助する。
従来と同じ規定
以下の3点は、従来の規制と同一の点である;
(1) 徴収基準
引き続き既存の排水費徴収基準に従って徴収する。
(2) 費用の計算方法
既存の排水費計算方法に従って徴収。
【納付すべき汚水処理費】=水使用量×汚水処理費徴収基準×0.9
(3) 徴収範囲
汚水処理費の徴収範囲は、既存の排水費徴収範囲と同一。加えて、徴収の方法についても基本的には変更なし。公共水道を使用する事業者や個人に関しては、上海市の水行政主管部門から委託を受けた公共水道企業が水道料金を徴収する際、汚水処理費も合わせて徴収する。自ら準備した水源を使用する事業者や個人は、上海市の水行政主管部門または同部門の委託を受けた事業者が徴収を行う。市中心部は、2016年3月1日より正式に実施。近郊地域については、準備作業が必要となるため、各地域の具体的な状況に応じて適宜延期する。
また同弁法では、汚水処理費の徴収・使用に関する資金の保障、政府や社会による監督の強化が要求されている。上海市の汚水処理費については、特別支出金とし、その項目にのみ使用できる。同費用の用途は、都市の汚水処理施設の建設、運用、汚泥の処理処分。さらに、弁法では、以下の要求が打ち出された。
- 汚水処理費の徴収・使用・管理は、財政・価格・監査部門や上級の水行政主管部門による監督および検査を受けること。
- 汚水処理サービスを担当する事業者は、汚水処理量、主要汚染物の削減量、汚水処理施設からの排水水質などの情報を定期的に公表すること。
- 上海市における市・区(県)の水行政主管部門や財政部門は、毎年6月末に同地域の前年度の汚水処理徴収・使用状況について社会に公表すること。
上海市は、今後より一層、水汚染対策を強化していく見通し。都市の汚水処理施設の基準引き上げ、改造、新規建設、拡張工事を加速し、汚水収集管網の敷設を推進するとともに整備を図り、汚泥の処理や処分にも力を入れる。農村の総合的な環境整備を改善し、汚水の収集率、処理率、処理水準の継続的な向上を図り、水環境の監督管理能力を全面的に引き上げ、上海市の水環境質を持続的に改善していく。
*1 http://www.shanghaiwater.gov.cn/xxgkAction!view.action?par.fileId=233435
*2 関連部門の税外収入と発生した支払を切り離し、収入は国庫や財政専用口座に納め、支出は各機関の職務履行上の必要に応じて基準に基づき財政部門が査定する仕組み。