豪州South East Water、上下水道のアセット管理において国内で初となるIoT技術の導入を発表

オーストラリア・ヴィクトリア州所有の上下水道事業者、South East Water社(本社:メルボルン)が2016年4月19日に発表したところによると、同社は、低消費電力のナローバンドIoT(NB-IoT:Narrowband-Internet of Things)技術を使用した上下水道のアセット管理を国内で初めて導入した。この取り組みは、上下水道施設のリアルタイムモニタリングを拡大し、ひいては水道事業の信頼性と効率、安全性の向上を促すことを目的としたものであり、同社では今後この技術の可用性について、3カ月間にわたって試験を実施する予定だという。

従来技術よりも消費電力が少なく、低コストのNB-IoTを利用してアセット情報を収集

今回South East Water社は、大手通信プロバイダーと提携し、ヴィクトリア州モーニントン半島とダンデノング丘陵において、NB-IoT技術を用いたインフラネットワーク管理のパイロット試験を開始すると発表した。エンドツーエンドのNB-IoTソリューションを提供できることを理由としてプロジェクトパートナーに選ばれたのはOptus社、Vodafone社、Huawei社である。3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)において標準化されたNB-IoTは、従来技術よりも消費電力が少ない低コストのナローバンド無線技術であり、無数の携帯デバイスやインフラ、ウエアラブルデバイス、車両などを互いにネットワーク接続することができる。NB-IoTを利用することで、これらのデバイスに組み込まれた電子機器やセンサ、ソフトウエアを使ってデータを収集し、共有することができ、アセット運用者は詳細なリアルタイム情報をもとに判断することが可能となる。

下水道アセット管理の他、不正取水の検知や雨水貯留管理にもNB-IoTを活用

この取り組みではまず、同社が進めるPeninsula ECO(Early Connection Option)プロジェクト*1に参加する下水道網を対象として既存の3G技術をNB-IoTに置き換え、ネットワークのパフォーマンスや資産の状態、故障箇所に関する情報を収集するとしている。また、稼働・適用条件のシミュレーション試験を行うため、ダンデノング丘陵のベルグレイブ地域において、類似した条件の下水インフラやサウスバンクの様々なアセットを利用して試験を行う。試験は合計約1000km2の広範囲にわたって実施される。また同社はこの他、NB-IoTチップセットを取り付けたマンホールによる不正取水の検知や、水関連施設の事故や損傷リスクの低減についても試験を行う。NB-IoTチップセットはさらに、雨水タンク管理システムにも採用され、貯水量の水位や降雨量の予測に関するデータを取得し、雨水貯留および洪水時の排水に役立てる。

South East Water社のジェネラルマネージャー、Phil Johnson氏は次のように述べた。「広範な地域にわたり、消費電力が少なく低コストのネットワークを導入することで、水道事業者とその顧客にとって大きな価値が産まれる可能性があります。この試験を通じて当社は、より信頼性と効率の高い給水を実現し、我々の社員の労働環境の安全性を向上させ、また顧客により経済的なサービスを提供するプラットフォームの構築を進めていきます」

*1 ライ、ブレアゴーリー、ポートシー、セントアンドリュースビーチ、ソレントを対象として、最大で同社の当初計画を16年前倒しして、下水道アセットのネットワーク接続するプロジェクト。対象地域内で条件を満たすアセットの所有者が、接続料を支払って任意で参加する。

タグ「, , 」の記事:

2020年7月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中のマイクロプラスチックの定義を発表
2020年7月9日
米EPA、飲料水中の過塩素酸塩を規制しない方針を最終決定
2020年5月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中の六価クロムの新汚染基準策定に向けたワークショップを開催
2020年3月24日
米EPA、飲料水中のPFOAとPFOSの規制を予備決定
2020年3月5日
中国の水ビジネスとIT技術の応用