ブラジル政府は、2016年8月1日、上下水サービス整備への投資にインセンティブを与える条項を、2007年1月5日の上下水整備ガイドラインを規定する法令No.11.445に追加する、法令No.13.329[1](以下、本法令)を公布した。本法令は公布日から発効となり、発効から2年後に適用が開始される。本法令は法令No.11.445に、以下の条項を加えるものとなっている。
第54a条: 上下水サービスを供給する法人による、上下水整備の為の投資を誘致する為、税優遇措置制度を制定する。またこの制度は、2026年まで継続するものとする。
第540b条: 以下の、上下水基本国家計画に従った、上下水システムの継続性と効率性向上を目的とする投資を、対象とする。
- 飲料水供給及び下水道、汚水処理の100%普及を目的とするもの。
- 水源を保護する為のもの。
- 飲料水インフラからの漏水を削減し、飲料水供給、下水道、汚水処理システムの効率性を向上させるもの。
- 技術イノベーション。
上下水基本サービス国家計画は、今後20年間で、水源の保護に加え、飲料水供給普及率及び汚水処理率を100%とし、飲料水の漏水を削減することを目的とするもので、2013年に発表された。4年ごとに見直されることになっている。政府の見通しでは、国家計画達成の為には5080億レアル(約15兆7480億円)の投資が必要で、59%は連邦政府、41%は州政府及び地方自治体の資金で賄われることになっている。
法案を提出していた上院議員によると、ブラジルの上下水サービスは地域格差が大きく(下図)、サービスの質が悪い地域が多い状態となっており、上下水サービスに1レアル投資することで、公共衛生費用が4レアル節約出来るとされている。税優遇措置金額は、年間約30億レアルとなる見込みとなっている。
図 ブラジルにおける地域毎の上下水サービス普及率((a)上水、(b)下水)
(出典:英国貿易投資総省、Opportunities for International Partnerships in Brazil’s Water and Wastewater Sector より引用)
なお、ブラジルの上水道普及率、下水収集率、下水処理率、無収水の2004年~2013年のデータは下表の通りである。水道普及率、下水収集率、下水処理率は少しずつではあるが向上しているいっぽうで、無収水についてはあまり大きな進展は見られていない。
表 ブラジルの水道関連データの推移
(出典:英国貿易投資総省、Opportunities for International Partnerships in Brazil’s Water and Wastewater Sector)
2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | |
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水道普及率(%) | 77.6 | 78.8 | 76.3 | 77.8 | 81.2 | 81.7 | 81.1 | 82.4 | 82.7 | 82.5 |
下水収集率(%) | 33.7 | 34.9 | 34.5 | 35.3 | 43.2 | 44.5 | 46.2 | 48.1 | 48.3 | 48.6 |
下水処理率(%) | 33.7 | 33.6 | 34.5 | 34.3 | 34.6 | 37.9 | 37.9 | 37.5 | 38.7 | 39.0 |
無収水(%) | 42.2 | 40.9 | 41.6 | 41.1 | 39.5 | 39.3 | 38.1 | 39.2 | 37.9 | 39.1 |
*1 http://www.planalto.gov.br/ccivil_03/_Ato2015-2018/2016/Lei/L13329.htm