Suezグループの資産運用会社として2010年に設立されたSuez Venturesはこのほど、フランス南東部シャトーヌフ・シュル・イゼールにあるPRODEVAL社の株式の22%を取得した。同族会社であるPRODEVALは1990年以降、バイオガスの処理・回収に専門特化して実績を上げてきたが、有機廃棄物及び下水汚泥からバイオメタンを回収する新技術VALOPURの商品化により、2015年に急成長を遂げた(同年の収益は690万ユーロ)。同社の事業分野は次のとおりである。
- 膜によるバイオガス精製
- バイオガスボイラー及びバイオメタンボイラー
- バイオガスドライヤー及びブースター
- 照明
- 硫化水素(H2S)と揮発性有機化合物(VOC)のシロキサン処理
- バイオメタン付臭
- バイオ天然ガスの生産と供給
- ごみ投棄場のガス抜き、バイオガス及び浸出液の輸送ネットワークの整備
- 保守、スペアパーツの供給
バイオガスは低炭素の再生可能エネルギーであり、天然ガスを補完する形で地域のガス供給系統に併入することができる。バイオガスの生産は、再生可能エネルギーの開発促進の一環として、フランス及び欧州の当局による支援対象となっている。EUの再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)では、2020年までにEUの総エネルギー消費量の20%を再生可能エネルギーで賄うことが目標として定められている。
欧州ではバイオメタンの生産量が急速に増加している。フランスでは2020年にかけて40億kWh相当分の電力をバイオメタンで賄うことにより、温室効果ガスの排出量を75万トン(CO2換算)削減できるものと予測されている。
PRODEVAL社は、フランスにおけるバイオメタン生産市場を牽引している。同社が開発したVALOPURは、高性能メンブレンに基づく革新的で高効率なバイオガス精製技術であり、その精製効率は99%を超える。SuezグループとPRODEVAL社は既に2015年から緊密な協力関係にあり、グルノーブルの下水処理プラントにおけるバイオメタン生産ユニットの設置をはじめ、アンジェ、ラ・ロッシュ・シュル・フォロン、アヌシー及びカンペールで合弁事業を受注している。
Suezグループは、フランスにおける下水汚泥からのバイオメタン回収のパイオニアであり、諸外国の水処理・廃棄物処理施設に約170基のメタン生産ユニットを供給した実績を有する。PRODEVAL社への資本参加により、フランスのバイオガス市場における同グループの占有率は今後5年間で30%増大し、50%となる見込みである。
なおフランスにおけるバイオガスプラントの総数は2014年時点では502で、下水汚泥からのプラントはそのうちの18%に相当する88である(下図)。
図 フランスにおけるバイオガスプラントの内訳
(出典:IEA Bioenergy)
一方、発電量ベースでみると下水汚泥からのバイオガス発電は全体のわずか3%である(下図)。
図 フランスにおけるバイオガスの発電量の内訳
(出典:IEA Bioenergy)