Barclays、エネルギー業界における水問題を指摘

英国ロンドンに本拠を構える投資銀行Barclaysは2017年3月21日、日常の事業活動と長期的な成長に水資源が必須であるエネルギー業界にて拡大しつつある水問題とその対策を明らかにした報告書“The water challenge: preserving a global resource[1]”を発表した。水不足や地下水の枯渇などの課題解決に向けて、世界の水資源を保全するため、持続可能な政策の策定や技術の導入とその実践が重要であるとした。

気候変動、干ばつ、人口増加や経済発展などの様々な要因が、利用可能となる水資源の需要を拡大させている。世界で膨大に存在する大部分の水は海水であり、飲料水や産業活動に使用される淡水(真水)は全体のわずか2%しかない。しかし、米国では、公共飲料水や産業用途で使用される水消費量のうちの約90%は淡水であるなど、淡水への依存度が高い。また、淡水のうちの約30%は地下水で占められているものの、世界的な地下水くみ上げに伴い、全体水域の3分の1は枯渇化が急速に進んでいる。世界の取水レベルの分布をまとめたものが下図で、米国西部、北アフリカ、中東、インド、中国などで、水の潜在的な利用可能レベルを超過していることが分かる。


図 世界での取水レベルの分布
(出典:The water challenge: preserving a global resource)

水不足を巡る問題は、人間の健康や食料の利用、最終的に公共の安全性へ直接的な影響を与える。取引販路の拡大に伴う世界間での相互依存性が高まりつつあり、特定地域で発生した水不足は、同地域の住民だけでなく、他の地域へ波及的な影響を及ぼす可能性がある。例えば、農業分野において、特定地域で発生した干ばつや多湿帯に広く流布する胴枯病などの災害は、当該地域に飢餓を発生させるだけでなく、世界の食料供給に影響を与える可能性もある。特に、淡水を他国から輸入する国は、これらの災害に脆弱である。

また、石油・ガスや電力・水道などのエネルギー業界では大量の水を使用することから、エネルギー企業は水資源を保護する重要な役割を担っている。石油・ガス業界では、フラッキングの使用に伴い水消費量が大幅に増大している。2008年には坑井1箇所あたりの水消費量が5,600バレルであったが、2014年には同128,000バレルを超え、現在では一部の地域で300,000バレルへ達している。一方、電力業界では、最終的に水域へ還元されるものの、発電所の冷却に大量の取水を必要とする。水不足の地域では取水が困難となるため、電力の需給バランスに影響を及ぼす可能性もある。また、水道業界では、石油・ガス事業とは異なる水問題を抱えている。同業界は、地方自治体が通常水道施設等を所有していることから、老朽化したインフラや水損失・漏水を解決する革新的なソリューションへの投資が欠如する傾向にある。水道業界では、水道施設の水供給能力の低下と水需要の拡大が主な課題である。


図 米国におけるセクター別の取水内訳(2010年データ)
(出典:米国地質調査所(USGS))

石油・ガス業界と電力・水道業界が抱える課題は異なるものの、最新技術や教訓を業界間で互いに共有することで、問題解決の糸口になると見られる。例えば、石油・ガス業界の大規模且つ資本力を有する企業や一部の電力・水道供給事業者が、資金獲得が困難な小規模な公共下水道事業者に対して財政支援を行う代わりに、公共下水道事業者が廃水処理した再生水を大規模の事業者へ提供することができる。石油・ガス事業者は、廃水の回収、再利用と革新的な技術の導入を通じて、石油・ガスの採掘時に淡水ではなく、再生水の利用を増大させることが期待されている。これにより電力会社は、塩水や再生水を利用することで、淡水の使用量を削減することが可能となる。また、電力需要管理や省エネの促進を通じて、発電量の低下に伴い水消費量を低下させることもできる。しかし、石油・ガス業界と同様に、再生水の利用は、淡水の代替となる新たな水資源となるものの、追加インフラを整備する必要があり、コストがかかるといった課題もある。最後に水道事業者は、水不足による既存システムを通じた水供給が制約されており、汽水、塩水、廃水といった淡水の代替となる新たな水資源に注目している。また、水保全、スマート水管理、漏水検知技術などを通じた、既存水供給システムの管理も、課題解決に向けた取り組みとして挙げられる。

[1] https://www.investmentbank.barclays.com/content/dam/barclaysmicrosites/ibpublic/documents/our-insights/water-report/ImpactSeries_WaterReport_Final.pdf

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