米ワシントンDCに本拠を置く環境保護団体Environmental Working Group(EWG)は2017年9月6日、米国内の45州で水道水が1,4-ジオキサンに汚染されているという調査結果をまとめた報告書[1]を公表した。それによると、27州の700万人以上のひとびとが、環境保護庁(EPA)が癌のリスクを増すとしているレベルを超える平均濃度の1,4-ジオキサンに汚染された水道水を利用している。
1,4-ジオキサンは有機溶媒などとして使われる物質で、EPAのこれまでのリスク評価では、この物質は0.35 ppbの濃度でヒト発癌性の疑いが濃いとされている。この物質はまた、改正有害物質規制法(改正TSCA)のもとで最初にリスク評価をおこなう10物質のひとつにも指定されている。
Cas No. | 123-91-1 |
物理特性 | 透明、かすかな可燃性液体、芳香あり |
分子量 | 88.11 |
水溶性 | 混合性 |
融点 | 11.8℃ |
沸点(760 mmHg下) | 101.1℃ |
蒸気圧(25℃) | 38.1 |
比重 | 1.033 |
オクタノール/水分配係数(log Kow) | -0.27 |
有機炭素/水分配係数(log Koc) | 1.23 |
ヘンリー定数(25℃)(atm-m3 /mol) | 4.80×10-6 |
図 1,4-ジオキサンの構造式と物理化学特性
重度の汚染地域
EWGの報告書によると、全米で水道水が1,4-ジオキサンに最も汚染されているのはつぎの3地域で、汚染の最大濃度は5.83 ppbに達しているという。
- ノースカロライナ州のケープフィア川流域
- カリフォルニア州ロサンゼルス郡南東部
- ニューヨーク州ロングアイランド
ウェブ上で閲覧できるこの報告書には、各地の水道水の1,4-ジオキサンによる汚染状況がわかるインタラクティブな全米地図や、各水道の詳細なデータを網羅したデータベースも掲載されている。
図 1,4-ジオキサンが検出された地域
(出典:EWG, CARCINOGEN 1,4-DIOXANE TAINTS TAP WATER NATIONWIDE[2])
トランプ政権の姿勢に激しく反発
報告書の公表にあたってEWGは、トランプ大統領がEPA化学物質安全・公害防止局(OCSPP)の局長に就かせたMichael Doursonが、EPAのガイドラインよりも1000倍高い1,4-ジオキサン濃度の水でも危険はないとする説を支持していることを指摘した。さまざまなNGOも、Dourson局長を指名したトランプ政権の姿勢に激しく反発している。
なお、以下のURL で、1,4-ジオキサンについてまとめたEPAのテクニカル・ファクト・シートを読むことができる。
https://www.epa.gov/sites/production/files/2014-03/documents/ffrro_factsheet_contaminant_14-dioxane_january2014_final.pdf
また、改正TSCAのもとでの1,4-ジオキサンのリスク評価については以下のURLを参照されたい。
https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/risk-evaluation-14-dioxane
[1] https://cdn3.ewg.org/sites/default/files/u352/EWG_1%2C4-DWater_Report_C03.pdf?_ga=2.181625959.1767755231.1506661770-501591599.1506661770
[2] http://www.ewg.org/interactive-maps/2017_14D.php#.Wc3WHFu0OUk