米ニュージャージー州環境保護局は2018年9月4日、水道水中のペルフルオロノナン酸(PFNA)の濃度を13 ppt(1 pptは1兆分の1)以下とする州の水質基準を制定した。これは水道水中のPFNA濃度基準としては全米で最も厳しいものである。水道会社や水道ユーティリティは、供給する水のPFNA濃度をモニターして、必要な場合にはPFNAを除去する対策をとらなければならない。同州では、水道水の水質基準は廃棄物処分場などの汚染サイトの浄化目標を定める場合にもその拠り所としての役割を担っている。
増えつづける血中PFNA濃度
今回のニュージャージー州の決定は、ヒトの血液中のPFNA濃度が上昇傾向にあることを示す複数の調査結果をうけてなされた。同州の決定が先駆けとなって、他の州や連邦政府の環境保護庁(EPA)がPFNA濃度基準見直しの検討に入ることも考えられる。
2013年に発表されたある調査結果によると、米国人の血中フッ素化合物濃度はほとんどの化合物について減少しているが、PFNAの濃度は上昇をつづけている。こうしたことから、州の機関であるニュージャージー州水道水質研究所が2015年に、水道水中のPFNA濃度基準を13 pptとすることを提案していた。
多くの有害なフッ素化合物のひとつ
EPAによると、肝組織の損傷、免疫系や甲状腺への影響、コレステロール値の変化など、健康に悪影響をおよぼすおそれのあるフッ素化合物はおよそ3000種類あるが、PFNAもそのひとつである。フッ素化合物は、泡消火剤の製造に使われているほか、衣類、ファスト・フードの包装材、カーペットなど、消費者向け製品のノンスティックおよび耐汚染加工に用いられている。
フッ素化合物のうち最もよく知られているのはペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)で、このふたつの物質も全米の水道水中でみつかっている。PFOSとPFOAについて、EPAは70 pptという強制力のないガイドラインを定めているが、EPAによると、PFOSまたはPFOAの濃度がこの70 pptを超える水道水を一生使いつづけると、健康に悪影響が生じるリスクにさらされる可能性があるという。