ウイルスを使って飲み水の大腸菌検査――コーネル大が開発

米コーネル大学の食品衛生研究者らが、遺伝子組み換えをしたバクテリオファージ(細菌に感染するウイルス、単にファージともいう)を使って飲み水の大腸菌検査を迅速におこなう技術を開発した。この検査技術は、交通・輸送の手段が限られている世界中の僻地などで使うことができる。この新たな技術を使えば、水のサンプルを遠方の試験施設へ送って検査結果を待つまでもなく、現地で検査を実施して数時間以内に答を得ることができる。この研究成果をまとめた論文が、イギリスの王立化学会のAnalyst誌上で発表された[1]。論文の共著者のひとりであるコーネル大学のSam Nugen准教授はこう述べている。「大腸菌による飲み水の汚染は公衆衛生上の大きな問題だ。われわれが使ったファージは、微妙な状況下で宿主菌を検知することができる。これは、現場で使える低コストの細菌検出アッセイを可能にするものだ」

大腸菌検出と溶菌の原理

コーネル大学の研究者らが使ったファージT7NLCは、ホタルの発光を可能にしている蛋白質と同様に、NLucというルシフェラーゼ(生物発光において発光物質が光を放つ化学反応を触媒する作用をもつ酵素)の遺伝子をもっている。このルシフェラーゼは炭水化物(糖質)バインダーと融合する。このため、ファージT7NLCが水中の大腸菌をみつけると感染がはじまり、融合酵素がつくられる。この融合酵素は、放出されるとセルロース繊維に付着し、冷光を発する。

このファージは大腸菌と結合したあと、DNAを大腸菌内に放出する。「これが大腸菌の終わりの始まりだ」とNugen准教授は言う。つぎにファージは大腸菌を溶解させ、酵素を放出する。また、増殖したファージが別の大腸菌を攻撃する。Nugen准教授はさらにこう述べている。「このファージはひとつの判断基準をあたえてくれる。ファージによる試験で、大腸菌が存在するという判定が出たら、その水を飲んではいけない。なぜなら、その水は糞便で汚染されている可能性があるからだ」

途上国における生活の質の向上に

論文の筆頭著者であるコーネル大学のTroy Hinkley博士号候補生は、社会奉仕に役立つ人道主義的な科学研究を中心に据えている団体、Intellectual Ventures/Global Goodでインターンとして働き、このファージのさらなる開発に取り組んでいる。ファージ・ベースの検出技術の重要性についてHinkleyはこう言う。「Global Goodは途上国のひとびとの生活を改善するのに役立つ技術をつくり出し、それを実地に応用している。残念なことに、不衛生な飲み水が原因で、防げるはずの多くの病気が世界中で発生している。ファージ・ベースの検出技術は、水源が安全であるかどうかの迅速な判定に使える可能性がある。これは、疾病予防を通じてコミュニティのひとびとの生活の質を直ちに改善するのに役立つ技術だ」

[1] T. C. Hinkley, et. al., Reporter bacteriophage T7NLC utilizes a novel NanoLuc::CBM fusion for the ultrasensitive detection of Escherichia coli in water, Analyst, DOI 10.1039/C8AN00781K
https://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2018/AN/C8AN00781K#!divAbstract

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