ドイツ連邦環境省が2019年11月22日、第10次排水令改正原案を発表した。本改正案はまだ閣議決定にいたっていない。
本改正案は基本的にEU産業排出物指令2010/75/EU(IED)の一部を国内法化するとともに、以下の排水分野のBAT結論を国内実施するものである。
- 化学部門の廃水/排ガス共同処理・管理システムに関連するBAT結論(2016年5月30日の欧州委員会の実施決定(EU) 2016/902)
- 非鉄金属産業に関するBAT結論(2016年6月13日の欧州委員会の実施決定(EU) 2016/1032)
- 木材パネル生産分野に関連するBAT結論(2015年11月20日の欧州委員会の実施決定(EU) 2015/2119)
IEDの目的は、環境汚染の総合的な回避と低減であり、とりわけ水域への排出の回避と低減を重視している。BAT結論に関する実施決定は、IED第13条第5項に基づく所定の規制手続きにのっとって下されている。BAT結論は、次の要件を含んでいる。
- 下水処理施設運転事業者に対するBATに基づく全般的な要求事項
- 下水に対する排出制限値の導入
- 個々の排水パラメータのモニタリングに対する要求事項
EUでは、IED指定産業施設に対し、高いレベルで環境を総合的に保護するため、BAT(利用可能な最高水準の技術;best available technology)を活用するよう義務付けている。BATとは、「事業の展開やその運営方法において、最も効果的で進んだ段階にあるテクノロジーのことで、排出制限値やその他の許可条件の根拠となる特定のテクノロジーを現場で適切に運用することをいう(要旨)」(IED第3条の(10))。
BATの決定基準は、IED附属書III(BAT決定基準)に列挙されている。BATの細目は、産業部門ごとに、欧州委員会の専門組織である欧州IPPC事務局が作成し、「BAT参照文書(BREF)」として発行している。BREFには、産業部門ごとの汚染排出基準が盛り込まれている。許認可当局に対して、事業場建設と運転の許可条件を定める際、参照すべき基準としてBREFの活用を義務付けている。