ロシア、上下水道設備の近代化が急務――必要投資額は700億ユーロ

ロシアの上下水道システムの現状は、とても西欧の基準に及ぶものではない。国の上水システムがカバーしているのは国民全体の3分の2に過ぎず、特に地方の集落では、いまだ地元の井戸が飲料水の主要供給源となっている。さらに悲惨なのは下水システムだ。国内の年間汚水発生量は約138億㎥、このうち89%が処理されているが、規定通りに処理されているのはその半分程度と見られている。国家建設当局Rosstroiの報告によると、国内の農村で下水道が整備されているのは全体の5%足らずである。市町レベルにおいても、5分の1では下水処理を行っていない。

 

国内の上水道網全長は52万8,000km、下水道網全長は17万6,000kmである。ところが、メンテナンスや更生工事など必要な処置を施されているのは、年間で上水道8,700km、下水道3,900kmに過ぎない。その結果、上下水道の3分の2は既に老朽化しており、水道管亀裂などが原因の水損失量は年間36億立方メートルに達している。このほか、ポンプ場、濾過装置、浄水設備などの老朽化も進行している。その結果、上下水関連インフラで発生するトラブル件数は年間約2万件に及ぶ。

専門家の査定では国内の上下水道整備に必要な投資額は700億ユーロ(約11兆円)にのぼるというが、こうした現状を顧慮すると充分に頷ける金額だ。

 

これまでインフラ投資が進まなかった主要因は、徴収される上下水道料金の低さにある。Rosstroiの調べでは、水供給・処理設備運営において採算がとれるようにするには、最低でも飲料水1立方メートルあたり料金11.20ルーブル(約49円)、下水で同8.80ルーブル(約38円)の徴収が必要である。しかし現状では、上水料金は平均で10.30ルーブル(約45円)、下水は7.90ルーブル(約35円)しか徴収されていない。

 

こうした中、地方自治体は積極的に民間投資を募り始めている。Rosstroiによると、すでに上下水関連事業の41%は民間会社が関与している。自治体サービスの担い手として最大の民間会社はOAO Rossiskije kommunalnye sistemy社で、同社は特にウラル・ヴォルガ地方を中心に、200市で活動を展開している。この他の大手としては、Ewrasiskoje wodnoje partnerstwo(EWP)社、Roswodokanal社、Don WK-Jug社などが挙げられる。ちなみに、こうしたロシアの業界大手のバックを固めているのは巨大コンツェルン企業だ。Roswodokanal社はAlpha Groupの傘下にあり、またEWP社はフランスVeoliaのパートナー企業である。

 

今後、投資が集中するのはロシア南部だ。2007年にRosstroiが草案した「南部地域圏ウォーターシステム(JuTWS)」プロジェクトはAstrachan市、Wolgograd市、Kalmückien市、Staewropol市の上水道整備を対象としており、2013年までに7億ユーロ(約1,130億円)の投資が見込まれている。また、黒海沿岸に位置するSotschi市では、2014年に冬季オリンピックが開催されることもあって、向こう25年間で上下水道整備へ2億5千万ユーロ(約405億円)の投資が予定されている。

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