オーストラリア連邦政府は2008年5月、海水の淡水化、水のリサイクル、および雨水の収集・利用を通して勤労家族や企業への給水確保を手助けするため、今後6年間で10億オーストラリアドル(約1000億円)の資金を提供すると発表した。Wong気候変動・水資源大臣は、「気候変動の影響で、オーストラリアの多くの都市や町では水が少なくなっており、すべての飲料水の供給を雨水だけに頼ることはもはやできなくなっている。この重要な課題に対応するには国家のリーダーシップが必要だ。ラッド政権は、給水手段の多様化に努める国内の都市を支援することで、そのリーダーシップを提供しようと考えている」と述べた。
総額129億オーストラリアドル(約1兆2900億円)にのぼるラッド政権の長期的水資源利用計画「将来のための水(Water for the Future)」では、給水確保は重要優先項目とみなされている。この計画のもとで打ち出された数々のプログラムのうち、予算10億オーストラリアドルの「都市部の水と淡水化に関する国家計画(National Urban Water and Desalination Plan)」は、労働党の水に関する選挙政策における重要項目であった。
この国家計画のもと、人口5万人以上の都市や町は、淡水化、水リサイクル、および雨水の収集・利用によって新しい給水源を確立するための資金援助を受けることができる。一方、民間セクターや水道局、州・準州政府および自治体は、助成金や税金との相殺というかたちでの資金援助を申請できる。ただし、資金援助の獲得は、州・準州政府がオーストラリア政府間協議会を通して同意した水改革を達成することが条件となる。
この国家計画で資金援助の認可が下りることになっている最初のプロジェクトは、南オーストラリア州のGlenelgからAdelaideにかけての公園用水リサイクル・プロジェクト(3020万オーストラリアドル)と、ビクトリア州GeelongにあるBarwon Shellの水リサイクル・プロジェクト(2000万オーストラリアドル)である。Wong大臣によると、これらのプロジェクトは、公園や工場ではリサイクルされた水を使うようにすることにより、40億リットルの水を飲料用に利用できるようにするものだという。
また、南オーストラリア州政府の計画案が適切であることを条件に、連邦政府はAdelaideの淡水化プラントにも資金を提供する予定である。
さらに、この国家計画では、パースの淡水化およびブリスベンの水リサイクルに関する「Centre of Excellence」と呼ばれる研究プログラムに、今後5年間でそれぞれ2000万オーストラリアドルの助成金を提供することにしている。Wong大臣は、「これらのCentre of Excellenceプログラムは、将来の給水確保に重要な役割を果たす新しい技術や実践方法の開発作業をサポートすることになるだろう」と語った。