ロシア、上下水システム近代化が加速、牽引役は飲料水に関する新規則

不況の中、ロシアの水関連設備投資がダイナミックな展開を見せている。多くの地方政府で、2009年春、飲料水供給網や浄水場の近代化計画が可決されている。大型プロジェクトの多くには、連邦政府ならびに国際金融組織による資金援助が予定されている。

そもそも、最大水深1637mを誇るバイカル湖を有し、カスピ海にも接している同国には、世界全体の淡水量の5分の1があるとされている。こうした国内の豊富な淡水賦存量を利用して、例えば南部隣国の乾燥地帯における灌水事業などといった、国外でのビジネスチャンスにも関心が寄せられている

 

一方、上下水システムの整備の遅れは著しく、近代化に必要な投資額は15兆ルーブル(約44兆5000億円)と見積もられている。未処理のまま放出される汚水の量は年間17立方キロメートルに及ぶ。また、貯水槽の保護対策が未整備であるために、地表水の40%、地下水の17%という高い汚染率が引き起こされている。さらに水道管全体の7割が老朽化しており、水損失の原因となっている。ロシア環境省の発表によると、国民の5人に1人は飲料水供給網の圏外で生活している。

水関連インフラ整備を推し進めているのが、2009年上半期にも議会承認が下りると見られている、「飲料水の安全性に関する」技術規則案だ。同規則案は、国民一人当たり1日の飲料水消費量250リットルを基準として、色・臭い・細菌などの水質基準値設定などを含めた飲料水供給に関わる全プロセスを統制するものである。規則案原文(ロシア語)はドイツ貿易投資振興機関(German Trade & Investment)にて入手可能。

また、政府は目下、水利管理の効率化、水資源の浪費予防、飲料水の水質向上を目的として、2020年までの水戦略ならびに「きれいな水」プログラムの策定に取り組んでいる。

 

さて、看板事業のひとつが、ドン川下流河畔の丘上に開かれた町ロストフ・ナ・ドヌ(Rostow-am-Don)における「よりクリーンなドン川へ」計画である。政府は2008年末に投資基金からの拠出金として10億5000万ルーブル(約31億円)をこれに充てることを認めており、さらに地方政府財政から9億ルーブル(約26億7000万円)、民間投資から20億ルーブル(約59億3000万円)が支出される。このプログラムの枠組みで、PPP方式による下水処理事業実施にあたるのがOOO ABWK-Eko社。下水管渠、紫外線殺菌技術を用いた下水処理施設、汚泥焼却施設の建設を予定している。

2014年冬季オリンピックの開催都市であるソチ(Sotschi)では、Ewrasijskiグループが、グループ会社である現地のJugwodokanal社を通して上下水道工事にあたる。2009年から2013年までの期間に、58億ルーブル(約172億円)の投資が予定されている。

また、2012年にAPEC首脳会議が開催されるウラジオストック(Wladiwostok)では、上下水設備の近代化・拡張工事に際して、2010年末までにSibirski ENTZ社が全体の計画構想を策定し、建設活動のコーディネートにはPrimorski Wodokanal社があたることになっている。

フランスのSUEZ Environnement社は今年3月、北部ハンティ・マンシースク(Chanty- Mansijsk)市における上水(温水も含む)供給事業投資への関心を公にしている。

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