ドイツ、水枠組み指令違反を欧州委員会から警告――「水サービス」の範囲に齟齬

欧州委員会は2011年9月29日、EU水枠組み指令を遵守するようドイツに要請した。そして、水サービスに関するコスト回収原則をめぐるドイツの解釈の仕方が狭すぎるとして、改められない場合は同国を欧州司法裁判所に提訴する、と圧力を加えた(以下のリンクに、欧州委員会のプレスリリース)。
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/11/1101&format=HTML

EU水枠組み指令の前文(38)では、「水域環境の損傷または水域環境への悪影響に伴う環境・資源コストを含む、水サービスのコスト回収原則を加盟国は考慮しなくてはならならず、とりわけ汚染者負担の原則にのっとるものとする」と定めている。つまり、汚染者負担の原則に基づくコスト回収原則にのっとって、水サービスの料金を設定すべきであるとしている。

しかし、ドイツ当局の理解によると、コスト回収原則を運用できる水サービスとは、飲料水供給と下水処理だけに限られる。一方、欧州委員会は、水サービス概念をもっと広義に解釈しなければならない、と主張している。それによると、水枠組み指令のコスト回収概念は、あらゆる水利用、あらゆるその影響にも及ぶ、と解釈すべきである。したがって、工業設備の冷却や農業用の灌漑のための取水といった活動を、ドイツのようにコスト回収の対象から除外してしまうのは、水枠組み指令違反にほかならない。欧州委員会によると、航海を目的とした地表水の制限、洪水防護、水力発電、農業用に掘られた井戸、産業用や私的な水消費などもまた、水サービスに含まれる。

欧州委員会は9月29日、環境法に違反した加盟国を相手取って侵害訴訟手続きを新たに進める、と発表した。その際、ドイツに今回の警告が出された。この事案に対処するため、ドイツには2カ月間の猶予が与えられている。

EU水政策の見直しの一環として、欧州環境政策研究所が6月14日に中間報告書(以下のリンクに現物)を公表した。それによると、一部の加盟国では、水価格設定制度の導入が遅れている。その一方で、コスト回収原則には相変わらず賛否両論がある。Janez Potočnik環境担当委員は2010年、農業の水利用をもっと効率的にするとともに、適切な価格設定をしなければならない、と警告していた。
http://ec.europa.eu/environment/water/blueprint/pdf/safeguard_fitness_freshwater.pdf

水枠組み指令は、水域を保全するための欧州の主要な政策ツールであり、水政策分野の措置の大枠を定めるものである。この目標を達成するための1つの措置は、水サービスに対してコスト回収政策を採用するよう、加盟国に義務づけたことである。前述したように、汚染者負担の原則を考慮して、水利用に伴う環境・資源コストを回収していかなければならない、というのが同指令の考え方である。

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