EUの公正取引当局は2012年1月18日、フランスの大手上下水道ユーティリティ、Veolia Environment、Suez Environment、およびSaurの3社に上下水道サービスの価格カルテルの疑いがあるとして、これら3社、およびフランスの水ビジネス企業の業界団体であるFederation Professionnelle des Entreprises de l’Eau(FP2E)を対象とした正式調査を開始した。これについて公正取引当局は声明を発表し、これら3社とFP2Eが最終顧客――おもにフランスの地方政府――に請求する価格の設定に関して「態度を調整しあった」かどうかを調査するとしている。
この件については、EUの公正取引当局が2010年に、3社が上下水道サービスの公共入札で談合をおこなった疑いがあるとして3社に対する立入捜査をおこなっている。FP2Eの資料によれば、上水道市場および下水道市場におけるこれら3社のシェアはそれぞれ69%と55%で、ふたつの市場の規模は合わせて年間120億ユーロ(約1兆2000億円)ほどである。
正式捜査の開始の公表に先立つ1月17日、ヨーロッパ委員会のJoaquin Almunia競争担当委員は、EU市場における取引の公正の確保について「防衛的カルテルおよび談合」との闘いが「この危機の時にあってわれわれの優先課題のひとつだ」と述べている。
公正取引当局による正式調査について、VeoliaとSuezは全面的に協力する旨の声明を発表している。FP2Eも、フランスの市場における客観的事実の解明のための協力を惜しまないとしている。Saurのコメントはいまのところ得られていない。
違反の場合は最高で年間売上の10%の罰金:
調査の結果、違反が認められた企業には、最高で年間売上の10%の罰金が科せられる。すなわち、罰金の最高額は、Veolia Environmentの場合は34億ユーロ(約3400億円)、Suez Environmentの場合は15億ユーロ(約1500億円)となる。しかし、Goldman Sachsのアナリストらによれば、過去の例からすると実際の罰金額はこれよりもずっと低くなるだろうという。また、正式調査がはじまったといっても、「その結論がいつ出てくるのかはまったくわからない」という。
なお、Suez Environmentはすでに、2010年の立入捜査の際に捜査官がオフィスのドアに貼った封印を破ったとして、2011年に800万ユーロ(約8億円)の罰金をEUから科せられている。
VeoliaとSuezの株、急落:
EUの公正取引当局による正式調査の開始をうけて、Veolia EnvironmentとSuez Environmentの株価は1月18日に急落した。仮に両社に罰金が科せられたとしても大した額にはならないだろうというアナリストらの観測をよそに、Veolia Environmentの株は5.5%下落して8.139ユーロ(約821円)に、Suez Environmentの株は、一時は4.5%まで下落したがその後ややもちなおして2.6%安の9.142ユーロ(約922円)となった。