タイ政府は、2011年11月現在、工業排水基準の改正を検討している。現在の工業排水基準は1996年(仏暦2539年)に策定されたものであるが、現在では水質分析技術が進歩していることから、2006年以来、天然資源環境省の公害管理局(PCD:Pollution Control Department)と工業省の工業事業局(DIW:Department of Industrial Works)が協力して、同基準の改正作業が進められてきた。
新たに策定された基準案における現行の基準からの主な変更点は以下の通りである。
- “色”に関して、具体的な基準値を設定
- 逆浸透(RO)膜式海水淡水化プラントに適用される溶解固形成分(TDS)の指標に関して、より緩い基準を適用することを許容
※ 主要なパラメーターの基準値は、概ね現行の基準値と同等である。
この新たな基準策定作業は、すでに最終段階に至っており、近いうちに公布、施行されるものと見られている。
現行の工業排水基準について:
様々な分野をカバーする包括的な環境基本法である国家環境保全推進法(Enhancement and Conservation of National Environmental Quality Act, B.E. 2535 (1992))は、第4章第2部にて排出基準について規定しており、天然資源環境大臣に対して、排気や排水等に関する汚染物質の排出基準を官報で公布する権限を与えている(第55条)。また、工場法(Factory Act, B.E. 2535 (1992))の下位法令である“工業省令:仏暦2535年(1992年)第2号”は、「排水に際しては、希釈以外の方法によって処理し、工業大臣が規定する水質を満たさなければ、廃水を排出してはならない(第14条)」と規定しており、工業大臣が排水基準を設定するよう求めている。
この結果、タイでは、国家環境保全推進法の下で制定される“科学技術環境省告示:仏暦2539年(1996年)第3号”および工場法の下で制定される“工業省告示:仏暦2539年(1996年)第2号”によって2つの工業排水基準が設定されている。ただし、これらは同一の内容となっており、事実上は単一の基準である。
現行の工業排水基準については以下のウェブサイトを参照のこと。
http://www.pcd.go.th/info_serv/en_reg_std_water04.html#s1