ユタ州の景勝地モーアブの南東の郊外に位置する天然ガス田で、水圧破砕による採掘が提案されており、これに一部住民が不安を感じている。
この天然ガス田については内務省土地管理局が、ユタ州のグランド郡とサンファン郡にまたがる広大な地域の南東部に位置するおよそ8万エーカーの国有地をエネルギー資源採掘のために貸与することになり、そのオークションが2013年2月19日に予定されている。Kiley Millerをはじめとするモーアブの住民らが心配しているのは、町を7マイルほど離れたサンファン郡との境界線をまたぐ2区画、3600エーカーが、貸与予定の土地に含まれていることである。
観光資源と水源に影響か:
反対運動のリーダーであるMillerは、プレス・リリースでこう述べている。「(国有地の貸与について)事前の通知もなかったも同然で、これは何が何でも承認を急いでいるとしか思えない。このふたつの区画は、モーアブ・ヴァリー、アーチーズ国立公園、それにキャニオンランズ国立公園が直接見渡せる場所だ」
モーアブの経済は観光で成り立っている。レッドロックと呼ばれる美しい景色がその観光の資源である。また、モーアブの唯一の水源であるグレン・キャニオン帯水層は、問題の3600エーカーの土地に隣接している。
土地管理局ユタ州事務所土地貸与支援課のDon Ogaard課長は、提案されているエネルギー資源採掘の影響を判断するために、土地管理局が現在、この土地貸与に関して環境アセスメントを実施しているところだという。
この環境アセスメントの報告書については、土地管理局モーアブ現地事務所のRock Smithが、9月中には一般公開されるはずだと述べている。なお、報告書の一般公開後、30日間のパブリック・コメント期間が設定されている。
広がる反対運動:
全米規模のリベラル派市民団体であるMoveOnに所属しているMillerは、水圧破砕――頁岩に高圧の流体を注入して割れ目をつくること――によるガス採掘により、モーアブの帯水層が汚染されるおそれがあることを指摘している。
MillerとMoveOnは、国有地の貸与を中止させるべく、請願書へのオンラインの署名を呼びかけている。署名サイトのURLはhttp://signon.org/sign/protect-the-moab-utahである。2012年8月30日午後現在、2677人の署名が寄せられている。
市民団体ばかりでなく、グランド郡の郡政委員を務めるAudrey Grahamも、帯水層に隣接するふたつの貸与区画(039区画と042区画)が飲料水におよぼす影響を懸念している。
Graham委員は土地管理局への書簡でこう述べている。「われわれは、水圧破砕で使われるすべての流体の成分について知ることを要求するとともに、最も厳しい基準と最良の方法により飲料水を守ることを求めるものである」
国有地の貸与について、グランド郡の郡政委員会はまだ正式な態度を決定していない。
Graham委員はまた、モーアブの近郊でエネルギー資源の採掘をすれば、トラックの交通量が増え、大気質が悪化するなど、ほかの面でもコミュニティにわるい影響がおよぶことを指摘した上で、つぎのように述べている。「それと同じくらい重要なのが、採掘の影響はグランド郡の住民がうけるのに対し、採掘目的の国有地貸与にともなう地元対策費と資産税はサンファン郡に行くという事実だ」