増大する米国水インフラ需要と進化する「設計‐建設方式」 ――DBIA主催の会議参加者は増加の一途、全米から地方の公共事業体も参加

下記の内容は、国際民営水協会(IPWA: International Private Water Association)の常任理事であるKathy Shandling氏が2013年3月に米Water Technology誌に寄せた文書から抜粋しまとめたものである。IPWAは、上下水道インフラのプロジェクトや関連サービス分野に従事する官民のプレーヤーの間に入って交流を促進する調整役として活動する非営利の国際的なコンサルティング機関である。具体的には、官民パートナーシップの実施を促進し、長期的に持続可能な資金調達方法やシステムの開発及び運用にも関与している。

米国にはアメリカ設計‐建設協会(DBIA: Design-Build Institute of America)という組織があり、これは米国における増大するインフラの資金調達とプロジェクト需要により効果的に対処してゆくために価値のある施策を提供している。具体的には、「設計-建設」方式などに関する充実した会議を企画し開催するなど、この設計‐建設方式に熟知しその推進に取組んでいる。実際、2013年3月20日~22日にかけてフロリダ州オーランド市で開催された「2013年DBIA上下水道会議」には全米の施設所有者が参集し、その数は記録的なものになったと伝えられている。

ともかく、このDBIAのような組織の重要性について、特に上下水道分野の企業であるならば、時折思い起こしてみる必要はある。
既にDBIAは、設備投資を伴う建設プロジェクトをうまく統合化させるインフラ事業の展開にとって必要なリーダーシップ、教育、客観的な専門知識、そしてベストプラクティスに関わる卓越した人材を有する組織となっている。そうした人的資源を基にDBIAは、施設の所有者のみならず設計と建設に携わる業者も確実に成功を収めることができるよう、設計‐建設プロジェクト提供方式の価値を広く伝え、設計と建設の両サービスをいかに効果的に統合化すべきかその方法を教えている。

現在、米国の上下水道セクターだけでも今後25年間にわたってインフラ投資に1兆ドルを超える資金が必要とされていることから、米国の連邦政府もまた州政府も予算面で危機に直面している。そうした現況の中で、米国はインフラ・プロジェクトの提供に関しては従来の方式、すなわち、伝統的な「設計‐入札‐建設」方式に代えてより効率的な新たなプロジェクト・デリバリー方式を取り入れるべく学んでゆくことが重要となっていた。

上述のアメリカ設計‐建設協会(DBIA)は1993年に創設され、今年20周年を迎えるが、その創設された1993年時点で「設計-建設」方式を実際に取り入れていたのは全米でたった1州、バージニア州であった。それが今では、何らかの「設計-建設方式」が取り入れられていない州はひとつもないという状況になっている。しかしながら、依然、公的機関が「設計-建設方式」による調達方法を採用することに厳しく制限を掛けている州が約8州存在している。

それでも、リーマン・ショック後の2009年から現在に至るまでの間に、以前にもまして多くの州で「設計-建設(DB)」関連法規が制定されてきた。例えば、ながらくその導入に抵抗してきたオハイオ、ニューヨーク及びテキサスの各州で既に導入されている。
次第に「設計-建設方式」が浸透し馴染んできたこと、景気後退後の厳しい財政事情の下でボトムライン〈経費削減〉が叫ばれてきたこと、それらが相俟って、州政府は従来の考え方を変えるきっかけを与えられて、今後一層必要とされるインフラ・プロジェクトが増えてゆく事態に対しては新たなプロジェクト・デリバリー方式を重視する必要があるとの認識に至ってきたのである。願わくば、今後、この「設計-建設方式」が従来のものに代わるオプションとしてではなく主流のオプションとして取り入れられてほしい。

DBIAは創設後6年を経た1999年に「設計-建設方式」に関する最初の会議を主催した。最初の会議は1999年春に「Transportation Conference」と題する会議として開催され、その8ヵ月後の1999年12月には、「Water/Wastewater Conference」と題する会議として開催された。後者の会議では、「Aqua-Economics: Design-Build for water and Wastewater Facilities」というテーマで論文が寄せられ、270名が出席した。米国水道協会(AWWA)と水環境連盟(Water Environment Federation)が協賛した。

1999年に初めて会議を開催してのち、この「DBIA Water/Wastewater Conference」への参加者の数は増え続けてきている。実際、2012年に開催された同会議には450名以上が出席した。これらの参加者の中には、建築家、エンジニア、インフラ施設の公的及び民間の所有者、建設業者(大手ゼネコンから小規模建設業者まで)、製造事業者やサプライヤー、弁護士や金融業者など多岐に渡るセクターの参加者が含まれていた。

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