欧州議会の本会議は2013年7月2日、EU水質政策分野の優先物質リストに新たに12物質を追加すると共に、将来的に優先物質に指定され得る新興汚染物質を示す監視リスト(watch list)に初めて薬剤を加える指令案を賛成646、反対51で可決した。
この法案(COM(2011)876)は、水質枠組み指令(2000/60/EC)と地表水の水質基準に関する指令(2008/105/EC)を改定するもので、欧州委員会が2012年1月末に提出した。今回、可決されたのは、欧州議会で同法案を担当するSeeber議員(オーストリア選出、欧州人民党グループ)がEU閣僚理事会との間でまとめた妥協案である(下記URLで閲覧可能)。
http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?type=TA&language=EN&reference=P7-TA-2013-298
これによると、新たに優先物質に指定された物質については、地表水中の許容濃度上限が環境水質基準(EQS)で定められ、2018年に発効する。これと併せて地表水の化学的に良好な状態を2027年までに達成すべく、EU各国は補助的な措置や監視計画などを2018年までにまとめて欧州委員会に提出する義務を負う。また、既存の優先物質に関するEQSのうち今回、改定されたものは2015年の河川流域管理計画に含められ、2021年までに良好状態の達成が目指される。
また、法案は3種類の薬剤を監視リストに加えるとしている。これらは、広く使われているホルモン製剤2種(17α-エチニルエストラジオールと17β-エストラジオール)と鎮痛剤ジクロフェナクである。薬剤が監視リストに加えられるのは今回が初となる。法案は、これら薬剤のリスクを認識した上で、欧州委員会に対し、水系環境中の薬剤が生じさせるリスクへの戦略的対策の構築を求めている。
EQSは、水、堆積物(水により運ばれて底に沈殿する物質全般)、生物相(地域の生物全般)に含まれる特定の単一または一群の汚染物質の濃度の上限を定めるもので、人体と環境の保護のため超過されてはならない。EU各国は河川流域管理計画を通じて、EQSが順守された状態を達成することになっている。
法案の欧州議会における審議過程と主要関連文書が下記URLから閲覧可能。
http://www.europarl.europa.eu/oeil/popups/ficheprocedure.do?reference=2011/0429(COD)&l=en