環境ビジネス分野などにおける市場調査を行っている、米国加州のEnvironment Business International(EBI)社によると、いまやその市場規模が300億ドル(約2兆9000億円)の米国のシェール・ガス採掘事業によって、環境サービス企業に15億ドルから20億ドル(約1500億円~2000億円)のビジネスが生み出されているという。これは、EBI社の発行する“Environmental Business Journal(EBJ) Vol.24 No.2”で述べられているもので、そこでは非在来型石油・ガス産業における探査と生産(E&P)について特集している。以下は、その最新号の内容紹介のあらましである。
頁岩層あるいはタイト・ロック層といわれる地層に閉じ込められた非在来型の化石燃料資源にはいくつか種類があるが、そのひとつがシェール・ガスで、これは水平掘削や水圧破砕といった革新的な技術によって採掘が可能になった。EBJでは、水圧破砕によるシェール・ガス生産にともなう環境サービスの市場規模を、水圧破砕の費用全体のおよそ5~10%と見ている。そのなかで大きな部分を占めるのは、初期サイト・アセスメント、試験、および一連の水関連のサービスである。
求められるのは、従来型のサービスと革新的術によるサービスの組み合わせ
シェール・ガス開発の急成長と、環境ビジネスにとってのその意味について特集したこの号で、EBJは水圧破砕市場の課題と、その克服がもたらす利益を詳細に分析している。
シェール・ガスのE&Pには、大気中への放出物や地表への流出物の管理、サイトの修復、環境モニタリングや試験など、環境企業による多くの従来型のサービスばかりでなく、これまでにない新たなサービスも必要となる。たとえば、水圧破砕にともなって生じる油汚濁水や逆流水の管理には、高度な技術イノベーションが要求される。廃水のリサイクルはいまやE&P企業にとって常識になりつつあり、また、リサイクルまではしていない場合でも、さまざまなレベルの水処理技術が求められることに変わりはない。これについてEBJのGeorge Stubbsシニア・エディターはこう述べている。「大小を問わず多くの企業がこの分野に参入し、深井戸処分から集中処理、さらにオンサイトでのリサイクルやリユースにいたるまで、さまざまな廃水処理ソリューションを提供している」
スピードとソフト・サービスの重要性
水圧破砕はまた、きわめてテンポの速いスケジュールを要求するものでもある。このことは、比較的テンポの遅い環境修復市場になじんでいる企業には、衝撃的とさえ映ることがある。「石油・ガス関連の仕事に経験のあるサービス企業でさえ、この水圧破砕ブームのさなかにあっては、正しいスタッフを正しい場所に正しいタイミングで投入するロジスティクスが最大の問題だと漏らしている」とStubbsは言う。
環境ビジネス業界にとっては、環境規制遵守のためのサービスに加えて、特に利害関係者らとの交渉など、「ソフト・サービス」の需要も見のがすことができない。シェール・ガスのE&Pの現場は、マーセラス頁岩層がひろがるペンシルヴェニアとその周辺の州のような、石油・ガス産業の歴史がほとんどないか、あるいはまったくないところにあることが多い。「顧客が利害関係者と交渉する上で一定の役割をはたすコンサルティング・エンジニアリング企業は、そうした交渉サービスをその顧客に提供することもできるし、また、見かたによっては、さらに踏み込んだビジネス・チャンスにつなげることもできる」とStubbsは言う。
非在来型石油・ガス市場の星と目されるシェール・ガスのE&Pは、EBJが毎年実施しているアンケートにおいて、この5年間、対象32分野のうち最も成長の著しい市場でありつづけた。天然ガス価格の下落につれてシェール・ガスE&P市場の「乾性ガス」部門の成長が鈍化したとはいえ、水圧破砕の未来は明るく、EBJのアンケートでも、2013年と2014年の水圧破砕関連ビジネスの予想成長率は回答者平均で12.5%だった。また、およそ5分の1の回答者が20%以上の成長を予想した。