地下水保護指令(2006/118/EC)を改定するために欧州委員会が起草した法案を、EU各国の代表からなる規制委員会(regulatory committee)が2014年2月12日に承認した。今後、欧州議会と閣僚理事会による最長3カ月の精査を受け、反対されなければ、欧州委員会が正式に採択して成立することになる。同指令の実施細則は、欧州委員会がEUのコミトロジー(いわゆる行政立法)手続きに従って規制委員会の支援を得ながら制定することになっている。法案は下記URLから閲覧可能。
http://ec.europa.eu/transparency/regcomitology/index.cfm?do=search.documentdetail&DzUNq+Ja86k4U6tcu2JFHFcWM/AAWd/9Nkx9hblfeiEDftvKFOKx2dvStAkgOQoq
改定は、欧州委員会が同指令の付属書IとIIについて2013年に実施したレビューを受けて提案された。今回、付属書I(EU共通の地下水質基準)については変更が無い。新基準を定めるのに十分な情報が利用可能でないと欧州委員会が判断したからである。この結果、付属書Iの記載物質は引き続き硝酸塩と殺虫剤のみとなる。ただし今回の改定では“監視リスト(watch list)”が導入され、新出物質などを含む汚染物質について、より多くの情報を収集し、将来的に対処する必要のある物質を特定するのに役立てられるようになる。既に地表水中の汚染物質については同様のリストがある。
一方、付属書II(EU各国が独自の基準値の設定を検討すべき物質を列記)にはリンまたはリン酸塩の合計と亜硝酸塩が追記される。これらが富栄養化に加担しているからだという。欧州委員会は、付属書IIの記載物質すべてについて、モニタリングと基準値設定を義務付けることを一度は検討したが、意見公募で各国当局や企業から良い反応が得られず、見送った。その代わり、地下水の化学的状態の報告に関する同指令のガイドラインを大幅に改定し、さらに基準値設定時の指針を多く追加している。
これでEU各国は、違反状態の存続をいつまで許すかなど、基準値の執行に関して透明性を高める必要に迫られることになる。なお現状では各国の基準値を相互比較するのは難しいと欧州委員会はしている。バックグラウンドレベル(自然状態での物質の濃度)の解釈が国によって異なることや、各国が提出した初の河川流域管理計画の情報の質が低かったことなどが原因だという。