2015年6月、中国環境報で、外資企業の撤退時における土壌汚染問題について、法整備が十分でない点が指摘された。外資企業が中国から撤退したり、他国に移転したりする事例は、有名な多国籍企業でも少なくなく、関係する分野も、工業、エネルギー、電子、日用品など多くの分野にわたっているが、その多くは斜陽産業で規模も小さい。これらの工業は、製造、貯蔵、輸送の段階で土壌汚染・地下水汚染をもたらす可能性があり、汚染源には、重金属、揮発性有機物、半揮発性有機物、持続性有機汚染物、硫化物、シアン化物、無機塩、酸、アルカリなどの汚染物が含まれる可能性がある。中国では、工場の移転時の土壌調査と土壌修復について、要件を定めたものはあるが、土壌と地下水の汚染防止の面の法律・法規は、まだ整備されていない。
「企業の移転の過程における環境汚染を防止する業務を適当に行うことについての通達(環弁(2004)47号)」は、企業移転時の土壌の調査、測定、修復について要件を定めているが、その対象は、危険廃棄物を発生し、かつ利用の性質に変更が生じる土地だけに限られる。また、「土壌汚染防止業務に関する意見」(環発[2008]48号)は、汚染企業が移転した後の工場跡地について土壌リスク評価と修復対策を行うよう求めているが、但し、その土地の開発利用を行うことを前提条件としている。
さらに、「工業企業敷地の再開発利用に際しての環境の安全の保障に関する通知」(環発[2012]140号)は、より全面的かつ詳細に規定しており、譲渡し開発利用される土地の調査、評価、修復に関して規定している。「市街地の古い工業地区の移転改造推進に関する指導意見」(国弁発[2014]9号)は、企業移転時の土壌修復について少し言及している。これらの2つの文書を実施するために、環境保護部は2014年に「工業企業の操業停止、移転及び敷地跡地の再開発利用時の汚染防止業務の強化に関する通知」(環発[2014]66号)を発行した。しかし、法律の面では、最新版の「外資企業法実施細則」でも、外資企業の登記抹消の手続において、会社の環境汚染責任について清算を行う規定は無い。
外資企業の母国では、環境保護法規が比較的整備されており、企業の遵法意識も高い。中国では土壌・地下水の汚染防止の面の法律・法規が未整備のため、汚染責任のメカニズムがまだ確立されておらず、外資企業の環境責任意識との間で落差があり、「郷に入っては郷に従う」という現象がたしかに存在する。北京建工環境修復株式有限公司の李書鵬副社長によれば、中国の大陸地域の外資企業で、工場敷地について土壌・地下水の調査と環境修復を行うのは欧米企業が主で、その他の国は比較的少ないとのことである。