台湾行政院環境保護署(以下、環保署)は、2016年1月6日、6件の放流水基準を改正した*1。同改正では、農地汚染のリスクを低減するため、特定地域内の事業または汚水下水道システムの放流水については、カドミニウム、全クロム、六価クロム、銅、亜鉛、ニッケルなどの重金属規制値の厳格化が図られている。
環保署によると、処理後の放流水が現行の規制基準に適合していたとしても、排出先となる受水域が基底流量*2の少ないかんがい用排水路またはその他の水路である場合、重金属が持つ蓄積性により、かんがい作物や農地の重金属汚染を招く恐れがある。上記について考慮した結果、直轄市、県(市)の監督官庁が公表する特別保護農地水系の総量規制区(以下、総量規制区と略称)における特定の受水域を経て放流水が排出される場合、確定済みの等級に応じて、カドミニウム、全クロム、六価クロム、銅、亜鉛、ニッケルなどの重金属には、厳格化された規制値が適用される。
第1級総量規制区の特定受水域の水質がかんがい用水水質基準に不適合の場合、同区での事業または汚水下水道システムの新規建設は許可されない。既存事業の6項目の重金属規制値は、かんがい用水水質基準で定める規制値とし、既存の汚水下水道システムにおける6項目の重金属規制値は、放流水基準の規制値の2分の1とする。総量規制区内の事業に対する厳格化された規制値と比べて、既存下水系統の規制値を緩めにすることで、事業の既存工業区への入居を奨励する。
第2級総量規制区の特定受水域の水質がかんがい用水水質基準に適合の場合、事業または汚水下水道システムの新規建設が許可される。新設事業の6項目の重金属規制値は、かんがい用水水質基準で定める規制値とし、新設する汚水下水道システムの6項目の重金属規制値は、放流水基準の規制値の2分の1とする。また、既存の事業および汚水下水道システムの6項目の重金属制限値も、放流水基準の規制値の2分の1となる。
環保署によると、今回、改正された基準は以下の6件。
(1) 「放流水基準」
(2) 「化学工業放流水基準」
(3) 「石油化学専門区における汚水下水道システムの放流水基準」
(4) 「光電材料および部品製造業の放流水基準」
(5) 「ウェハー製造および半導体製造業の放流水基準」
(6) 「科学工業団地の汚水下水道システムの放流水基準」
放流水基準は、末端を規制するための枠組みである。廃水処理施設の適切な取り扱いや機能効率の向上を図る以外にも、各界に呼びかけて廃棄溶剤の処理過程における汚染源の規制を強化する。また、廃水処理施設への化学品の流入を減少させ、末端で行われる廃水処理における複雑性の軽減を図る。
*1 改正された放流水基準の原文は、下記のURLよりアクセスできる(中国語:繁体字)。
http://ivy5.epa.gov.tw/epalaw/index.aspx
*2 無降雨時の低水量時の流量のこと。