ドイツ連邦内閣が2016年5月11日、B・ヘンドリクス環境大臣の提出した「地表水を保全するための政令(地表水令)」改正案を閣議了解した(以下のリンクに、同政令案の原文掲載)。
http://www.bmub.bund.de/fileadmin/Daten_BMU/Download_PDF/Gesetze/ogewv-entwurf.pdf
ドイツの現行の2011年地表水令は、地表水に対する化学的、物理学的、生物学的な要求事項を定めるとともに、化学的生態系の状態に対するガイドラインを設定するものである。たとえば、環境や人の健康に対して著しいリスクをもたらす特定の化学物質がEUの地表水から検出された場合、それを制限するための環境品質基準を定めている。
今回、EU法をドイツ国内法に転換するため、地表水令の一部を改正する。政令案の骨子は次のとおりである。
(1) 河川水域の状態を評価しモニタリングする重要なガイドラインを最新化しつつ簡素化する。これにより、良好な河川水域状態に対する要求事項を、欧州レベルで統一する。現場の河川水域所管当局にとっても、決定の安定性が増すことになる。
(2) つい最近になって河川水域で検出されるようになった新規物質を対象に、欧州標準の水質測定方法を導入する。とりわけ、水質汚染のデータ評価の改善を図る。これにより、河川水域に対する化学物質リスクの重要性を効率よく、しかも迅速に評価できるようにする。
(3) 河川水域で測定しなければならない物質のリストを段階的に分類する。100種の個別物質がもはや重要性を失ったのでリストから削除する。これに対し、12種の欧州レベルの優先物質と9種の新規物質を対象に、環境品質基準を定める。これに関係する物質はおもに農薬であるが、それに留まらず殺生物剤や工業用化学品も対象とする。さらに、塩化物とその塩の濃度に対する、いわゆるOrientation value(許容可能とみなせる値)をドイツ全体で斉一化する。
(4) なお、欧州委員会が医薬物質による生態系リスクを制限するための包括的な戦略を策定中であることから、本政令では、医薬物質に関する環境品質基準を定めていない。医薬物質その他のマイクロ有害物質に関しては、連邦環境省が河川水域保全のための特別計画を策定しているところである。
(5) 河口水域や沿岸水域にみられる過剰な栄養素に対処するため、農業用の肥料に由来すると考えられる窒素化合物に対して新たなガイドラインを定める。このガイドラインを遵守する場合に限り、河川水域の良好な状態が達成できるし、あるいは維持できる。この新しい値は、流域の農業利用にあたり、窒素濃度を直近値の最大6割低減するよう要求するものである。