タイ工業省は、2017年6月7日、工場法に基づく下位法令“工業省告示:仏歴2560年(2017年)工場排水の排出管理基準”を公布した。公布と同時に施行された本告示は、工場から排出される排水の基準値を定めるものである。本告示の施行とともに、1996年に制定された「工業省告示:仏暦2539年(1996年)第2号 産業排水基準」は廃止された。
国家環境保全推進法との兼ね合い
これに先立つ2016年6月6日、天然資源環境省は、国家環境保全推進法に基づく排水基準“天然資源環境省告示:工場、工業団地及び工業地区からの排水管理基準”を公布しており、この基準値は2017年6月6日から施行されている。このたび発表された工場法に基づく排水基準値は、一年前に公布された国家環境保全推進法に基づく排水基準値と等しくなっており、実質的には同一の基準である。
ではなぜ異なる法律の下で同一の基準が施行されるのか?これはタイの法制度と関係している。国家環境保全推進法は天然資源環境省が所管する一方、工場法は工業省が所管している。前者は、タイの環境基本法であり、その排水基準値は国家の基準としての意味合いをもつ。一方、後者は工業省が工場を管理するための法律であり、工場を現場で検査する担当官にとっては、実際に法令を適用する際の拠り所となる。
ではこれらの基準に違いはあるのか?大きな相違点の一つとして、適用対象者が挙げられる。前者は、水質汚染源として指定される工場――すなわち第2種あるいは第3種に分類される中規模および大規模の工場――を適用対象とすることを意図している。一方後者は、第1種~第3種のすべての規模の工場を規制対象とする。また、前者はすべての汚染源を規制対象とするが、後者は工場のみを適用対象とする。したがって、工業団地については、工場とは異なるので、前者が規制し、工業省の検査官は工業団地の検査権限を持たない。
上述の“工業省告示:仏歴2560年(2017年)工場排水の排出管理基準”は、以下のURLよりダウンロードできる。
http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2560/E/153/11.PDF