米EPA、DWSRFプログラムを対象とする新たなガイダンスを発行

米環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)は2019年3月25日、飲料水州回転基金(DWSRF:Drinking Water State Revolving Fund)の融資プログラムへ州政府が申請する際に参考となる新たなガイダンスを発行した[1]。トランプ政権は最近、インフラ整備への投資を進めており、地域の水インフラ施設の近代化を図るために、地方自治体が必要となる財政支援や資金提供を積極化している

DWSRFプログラムは、1996年の安全飲料水法(SDWA:Safe Drinking Water Act)の改正に伴い1997年に設立された。米国内における安全な飲料水の供給を支援するため、水インフラ整備や州政府が展開する水供給プログラムに対して財政支援を行うことを目的としている。米国議会は毎年、DWSRFプログラムの予算を確保(承認)し、その後EPAが、水インフラのニーズ調査や評価「Drinking Water Infrastructure Needs Survey and Assessment」に基づき、州政府に対して補助金を付与している。2018年度は同プログラムにて水インフラの整備を対象とした融資(ローン)やローンのリファイナンス(借り換え)に28億ドル(約3119億1700万円)、全米における公衆の健康を改善する水インフラ整備に25億ドル(約2784億9700万円)を支出した。EPAのAndrew Wheeler長官は3月中旬、ワシントンDCに位置するWoodrow Wilson Centerにて、「(DWSRFに代表される)連邦政府による水インフラ財政支援プログラムは、世界の水危機を解決するために、国際社会が導入すべき模範的な存在である」と演説した。

EPAが今回発表したガイダンスには、2018年米国水インフラ法(AWIA:America’s Water Infrastructure Act)に基づき改正されたDWSRFプログラムの変更内容が反映されている。同プログラムの主な変更点は以下のとおりである。

  • 低所得者層(貧困地域)や公衆の健康リスクが高い地域などの優先的に整備が必要な地域に対して付与する補助金額を増額
  • DWSRFプログラムへの申請要件を緩和し、水資源の保護活動や水資源のアセスメントなどへも適用拡大
  • 米国にて製造された製鉄や鋼鉄を活用して上下水道インフラを建設、保守、修理するプロジェクトに対して優先的に財政支援を行うDWSRFプログラムの一つの要件である「米国製鉄・鋼鉄条項(American Iron and Steel provision)」の適用を2023年度まで延長
  • DWSRFプログラムにて提供されるローンの付与期間を通常の場合最大30年、優先的に整備が必要な地域は最大40年まで延長

1997年のDWSRFプログラムの設立以降、EPAは合計200億ドル(約2兆2279億8000万円)に上る予算を拠出してきた。これらの予算を活用し、特に貧困地域や公衆の健康リスクが最も高い地域を中心として、数多くの地域に飲料水を供給する水インフラプロジェクトに対して、380億ドル(約4兆2331億6200万円)の財政支援を行った。

[1] ガイダンス文書の原文は以下よりダウンロード可能。
https://www.epa.gov/sites/production/files/2019-03/documents/awia_dwsrf_implementation_memorandum.pdf

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