イタリアの水ビジネス業界の整理統合を睨んだSuez Environnementの動き

廃棄物と水の分野での世界最大手グループのひとつ、フランスのSuez Environnementは、イタリアの細分化された水市場の整理統合が進むなか、イタリア水ビジネス業界におけるリーダーの一角を占めようとしており、また、世界各地でさらなる企業買収の機会をうかがっている。Suez EnvironnementのJean-Louis Chaussade CEOは、2014年上半期の決算報告にあたって、今後の見通しなどについて記者団に語った。それによると同CEOは、イタリアのおよそ100社の水ビジネス企業が整理され、大手数社に統合されると予想している。「今後20年間にイタリアの水ビジネス企業の数が減り、市場が整理統合されることは明らかだ。そうなると、フランスのように、3社ないし4社の大手が市場をリードすることになり、われわれはその1社になりたいと考えている」Chaussade CEOはこう述べた。フランスでは、Suezと、それよりも規模の大きなVeoliaとが、上水道ビジネスを支配している。

ローマのユーティリティAceaの株式の12.5%を取得

2014年2月、Suez Environnementは親会社のGDF SuezからローマのユーティリティAceaの株式の3.95%を買い取り、Aceaの株式全体に占める自社の持ち分を12.5%とした*1。これについてChaussade CEOはこう述べている。「われわれは、向こう10年ないし15年のあいだにイタリアの市場を統合する企業のひとつといっしょにやっていきたいと考えている」

Aceaの株式――時価総額が23億ユーロ(約3100億円)で51%をローマ市が所有――のSuezの持ち分を今後増やす可能性があるかとの問いに対し、Chaussade CEOは、Aceaの経営に関してSuezはローマ市とつねに接触を保っているが、現在の持ち分以上のことは望んでいないと答えた。

Chaussade CEOは、フランスとスペインに次いでイタリアがSuezの欧州における水ビジネスの3本目の柱になることを期待している。2013年、Suezは欧州で146億ユーロ(約2兆円)を売り上げたが、そのうち、フランスでの売上は全体の37%を占め53億ユーロ(約7300億円)、スペインでの売上は11%を占め16億ユーロ(約2200億円)だった(下図)。

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図 Suez Environnement 2013年の地域別売上比率
(出典:Suez Environnement, 2013 Full Year Results)

いっぽう、Aceaの2013年の売上は36億ユーロ(約4900億円)で、そのうち水の売上は17億ユーロ(約2300億円)だった。また、Suezはイタリアのトスカーナ州にいくつかの水ビジネス企業をもっており、その売上は合わせておよそ5億ユーロ(約690億円)となっている。

南欧の安い水道料金とインフラの不足

Chaussade CEOによれば、南部ヨーロッパの水道料金は比較的安く、イタリアでは1立方メートルあたり1ユーロ(約140円)をわずかに上回る程度だという。ちなみに、ヨーロッパの平均水道価格は1立方メートルあたり3.81ユーロ(約533円)で、デンマークでは6.55ユーロ(約917円)、ドイツでは5.31ユーロ(約743円)となっている(下図)。これについて同CEOはこう述べている。「南欧で水道料金が安いのは、インフラが不足しているからだ。われわれのような企業なら、合理的な水道料金でインフラを整備することができる」

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図 欧州各国における水道料金
(出典:Suez Environnement, 2014 Half Year Result)

Chaussade CEOはさらに、南欧の水道料金は、インフラのグレードアップが進むにつれて物価の上昇よりも速く上がっていくだろうとの見通しを示した。これはすでにスペインで起きていることであり、イタリアでもそうなるだろうというのが同CEOの見かたである。

じゅうぶんな資金的余裕

SuezはAceaの株式取得に加えて、スペインの水ビジネス企業、Aguas de Barcelona(Agbar)の株式の24.1%をLa Caixaから買い取った*2。それにもかかわらず、Suezの資金的余裕は2014年はじめと変わらないとChaussade CEOは言う。

今後の企業買収の見通しについて、同CEOはこう述べている。「われわれのレーダー・スクリーンにはさまざまな規模の事業が映し出されており、年内には、そのうちのいくつかが具体的なかたちをとるかどうかが明らかになるだろう」

2014年4月、Suezは当年の企業買収用におよそ7億ユーロ(約960億円)の予算の用意があることを明らかにしていた。そのとき明らかにされたおもな買収対象の事業分野は、産業用水、廃棄物からの資源およびエネルギーの回収、新興市場における成長分野、およびスマート水道メーターである。

2014年上期決算の概要

2014年上期、Suezの欧州における水ビジネスの売上は2.4%伸びて22億ユーロ(約3000億円)となった。また、利子、税、減価償却、債務償還前の利益(EBITDA)は4.6%伸びて6億700万ユーロ(約830億円)だった。しかし、上半期の総売上は2.1%落ちて68億9000万ユーロ(約9420億円)となったが、これはおもに、為替変動によって1億6800万ユーロ(約230億円)の差損が生じたことによる。いっぽう、2014年上期の純利益は、1億4800万ユーロ(約202億円)から一挙に2億8000万ユーロ(約383億円)に伸びた。これには、CEM Macauの売却による利益、1億2900万ユーロ(約176億円)が大きく貢献している。欧州における廃棄物の処理量は、Suezのおもな市場における工業生産がわずかに減少したにもかかわらず、1.2%増加した。しかし、リサイクル資源の価格が下落したため、欧州における廃棄物部門の売上は2.4%減って31億ユーロ(約4200億円)となった。

この決算概要について、カナダロイヤル銀行のアナリスト、Martin Youngはこうコメントしている。「廃棄物の処理量の増加はよろこばしいことだが、経済状況があいかわらず厳しいのは明らかだ」

Suezはまたこの決算発表に際して2014年の目標を明示したが、そこではコア・ビジネスでの利益をすくなくとも2%伸ばすとしている。2014年7月30日のSuezの株価は、寄り付きに前日比4.1%高を付けたあと、正午には3.6%高で推移した。

 

*1 EWBJ49号に関連記事有り「Suez Environment社、GDF Suezが放出した伊ACEA社の株式を購入*2 EWBJ51号に関連記事有り「Suez Environnement、スペイン投資会社Criteria Caixaholding社とのパートナーシップを強化――スペインおよびチリでの地位向上を目指す

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