国際、世界水の日に向け、UNが2050年までに水需要が55%増加と予測

2015年3月20日に公表された“UN World Water Development Report”によると、2050年までに、世界の水需要は55%増加すると予測され、その主な増加要因は製造業、火力発電および家庭用水によるものであり、開発途上国の都市化が進んでいることも要因であるという(なお、世界全体の都市と地方における人口推移については下図の通り)。また、同報告書のデータによると、地下水からの供給は減少しており、世界の帯水層のおよそ20%が現在過剰に採取されているという。

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図 世界全体の都市と地方における人口の推移
出典:The World Water Development Report 2015 – Case Studies and Indicators, Facing the challenges

毎年3月22日の世界水の日は、コミュニティおよび施設(特に保健医療施設)において水不足や不十分な公衆衛生および衛生状態が、西アフリカでのエボラ出血熱の拡大を深刻化させた要因であると再認識させている。世界保健機構(WHO)によると、全人口70億人の約35%が家庭用トイレや公衆トイレのような衛生設備が無い環境で生活しており、およそ18億人が排泄物で汚染された水を飲んでいるという。

また、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)の水処理ソルーションユニット(Dow Water & Process Solutions unit)によると、今後15年間で世界の人口はインドの人口規模、つまり約12億人増加する見込みであり、2030年までに今よりもさらに30%の水、40%のエネルギー、50%の食糧が必要となる可能性があるという。

“The World Water Development Report 2015, Water for a Sustainable World”は以下よりダウンロード可能。
http://unesdoc.unesco.org/images/0023/002318/231823E.pdf
“The World Water Development Report 2015 – Case Studies and Indicators, Facing the challenges”は以下よりダウンロード可能。
http://unesdoc.unesco.org/images/0023/002321/232179E.pdf

以下に、各国・地域の水に関連するトピックをいくつか紹介する。

イスラエル

IDE Technologies LtdがイスラエルのSorekに構える、逆浸透膜を用いた海水淡水化プラント(seawater reverse-osmosis desalination plant)は、1日に150万人以上の国民に供給することができる十分な量の飲料水を生産しており、これはイスラエルの都市水道水の約20%を占めるものである。同社のAvshalom Felber CEOによると、イスラエルにある他の3つの海水淡水化プラントと合わせて、計4つのプラントで同国の総水供給量の40%を占めるという。Felber氏は、海水淡水化が43か国、およそ7億人に影響を与える“世界の水不足問題”に対処する一つの選択肢であると述べている。

米国

米国カリフォルニア州サンディエゴの地域も、カールスバッド(Carlsbad)に1日に5000万ガロン(約2億リットル)の海水淡水化施設を今年完成させる予定で、ハンティントンビーチ(Huntington Beach)にも類似した施設を建設途中である。しかし、2015年3月、最も人口の多い同州で記録的干ばつが4年目に入ったことを受けて、規制機関が水の使用に関する制限を厳しくした。州水資源管理委員会(California State Water Resources Control Board)による新しい規則には、豪雨後48時間以内の芝生への水撒きの禁止や芝生への水撒きを1週間に2日とする制限も盛り込まれている。NASAによると、同州の貯水池にはたった1年分の水しか残っていない可能性があるという。

ブラジル

またブラジルのサンパウロでは、80年間で最も深刻な都市の干ばつの渦中で、井戸を掘る許可を求めているマンションの数が増加している。ブラジル最大の放送局Globo TVによると、同国の上下水道局(Department of Water and Sewage)は、2014年、昨年に比べ17%多い1058件の井戸の掘削申請に許可を出したという。

中東地域

湾岸協力会議(GCC)諸国はこれまで、水関連インフラ(淡水化プラント、水処理施設、ダムなど)に多額の投資をおこなってきたが、水をいかに効率的に供給、使用、リサイクル、再利用するかについての関心は不十分であった。このため今後は、水資源の持続可能な利用に向けて、全てのセクターにおける水の供給側での既存の管理施策を再検討する必要がある。

GCC諸国における各セクターの水消費量は下図の通りである。国によって比率は異なるものの、工業分野での水消費量はいずれの国においても低い。ただし、この工業分野での水消費量は、1990年台中頃は3億2100万m3で全体の1.3%程度であったが、2010年には13億m3超にまで拡大し全水消費量の5.3%となっている。工業用水については主には地下水からの供給で(約96%)、残りは脱塩水によって補完されている。

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図 GCC諸国におけるセクター毎の水消費量の内訳(2010年)
出典:The World Water Development Report 2015 – Case Studies and Indicators, Facing the challenges

また、GCC諸国の上水道システムは連続的な供給で信頼できるサービスを提供しているが、無収水のうち漏水の割合が高いことが問題として挙げられる。例えば、サウジアラビアでは20~40%、バーレーンでは30%と推定されている。このため、上水網における水の損失に対する関心は高まってきている。カタールでは2007年の無収水率は59.1%だったのが、2012年には19.6%まで改善した(下図)。さらにクウェートとUAEでも、無収水率はそれぞれ5%と7%にまで達している。

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図 カタールでの無収水率の変化
出典:The World Water Development Report 2015 – Case Studies and Indicators, Facing the challenges

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