中国国務院は、2015年10月11日、「海綿都市*1建設の推進に関する指導意見*2」(以下、「本意見」)を公表した。本意見は、海綿都市建設の促進、都市部水生態の修復、水資源の保護、都市部水害予防能力の向上、公共資産有効投資の拡大、新型都市の品質の向上、人と自然の調和的な発展の促進を目的として策定されたものである。これまでに「国務院:都市インフラ施設建設の強化に関する意見」、「国務院弁公庁都市排水・浸水防止施設建設取組みに関する通知」などの政策が公表されて以降、中国国内では海綿都市建設関連モデル事業が推進され、都市部での効果的な浸水対策、都市部生態安全保障などの面において積極的な効果を挙げている。
本意見は、全体要求、計画作りの強化、建設の統括と順序、インセンティブ策の健全化、実施の徹底の全5部から構成され、9項目の具体的な任務を明確にしている。その詳細の一部は以下の通りである。
目標
海綿都市の建設を通じ、“滲(滲透)、滞(遅滞)、蓄(蓄積)、用(活用)、排(排出)”などの措置を総合的に採用し、都市開発における生態環境への影響を最小限に抑え、70%の雨水をその場で吸収・再利用させる。2020年までに都市部の建成区の20%以上の面積、2030年までに都市部の建成区の80%以上の面積で目標要求に達成させる。
主な任務
- 科学的な計画の策定
雨水の年間流出量管理率を拘束性指標として都市計画に盛り込み、地域雨水排出管理制度を構築する。 - 計画の厳格的な実施
海綿都市建設関連要求を都市計画、建設プロジェクトの前提条件とし、施工図審査、施工許可、竣工審査などにおいて厳格に徹底させる。 - 関連基準・規範の健全化
海綿都市建設関連基準規範の修訂と健全化を加速させる。 - 新規建設地域と既存市街における海綿都市建設の統括的推進
- 海綿型建築および関連インフラ施設の建設の推進
海綿型建築住宅団地、海綿型道路・広場の建設、都市部排水・水害防止施設および浸水発生しやすい場所における改造を推進し、雨水と排水の分流を実現させ、科学的に雨水の調整施設をレイアウト・建設する。 - 公園緑地建設および自然生態修復の推進
- 建設・運営におけるメカニズムの革新
海綿都市建設プロジェクトの経営性と非経営性の属性を区別し、政府資金と民間資金のリスク分担、収益共有の協力メカニズムを構築し、民間資本の海綿都市関連投資建設、運営管理事業分野への進出を奨励する。 - 政府投資の拡大
中央財政は、既存ルートを通じ、統括的に資金を運用し積極的に海綿都市建設事業を手引きする。地方政府は、海綿都市建設事業への資金投入規模を拡大させる。 - 融資支援体制の健全化
*1 「海綿都市」については、EWBJ55号の中国水市場コラム「中国『海綿城市』関連事業展開の状況と今後の発展方向」のなかで最近の主要動向を解説。
*2 http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-10/16/content_10228.htm