ブラジル上院の科学技術通信・IT諮問委員会は2016年5月17日、海水や地下水の淡水化を奨励する法案PLS 259/2015*1を承認した。法案はこの後、環境及び消費者保護・監視諮問委員会で検討され、承認されれば、上院で審議されることになる。
法案の主な内容は以下の通りで、2007年1月5日公布の、上下水整備に関する国家政策を規定する法令No.11.445の一部を改正するものとなっている。
- 法令No.11.445の第48条の、上下水整備に関する国家政策のガイドラインに、以下の項目を追加。
「XIII 海水や、塩分を含む地下水の淡水化に、インセンティブを与えること」
- 法令No.11.445の第49条の、上下水整備に関する国家政策の目標に、以下の項目を追加。
「XIII 海水や、塩分を含む地下水の淡水化技術の適用を奨励すること。またこれを施行する為の資金配分にあたっては、半乾燥地帯や、水の供給量が需要を下回る水域の、飲料水向けを優先すること」
地域ごとの水資源の偏在が問題に
法案を出した上院議員の提議書では、国連によれば世界の水の97.5%は海水であり、淡水はわずか2.5%であるが、水資源が豊富なブラジルでは国内での水の供給量に格差があり、人口の5%しか居住していないアマゾン河流域では全体の70%の水の供給量があるのに対し、人口の4分の1が居住する北東部の水の供給量は全体のわずか4%となっている点や、近年サンパウロ州で深刻な水不足により水の供給が制限され、水不足は多くのブラジル人の現実となっている点が指摘されている(下図は、ブラジルの地域ごとの一人当たり水資源量の分布を表す)。また北東部の半乾燥地帯では地下水にも塩分が含まれており、淡水化の技術が進んでコストも下がってきているなか、こうした半乾燥地帯や水が不足している地域を優先して、淡水化を奨励する法的枠組みを確立することは、国民への水の安定供給を保証するという国家目標に沿ったものであり、また地下水の過剰使用を抑えることで、環境対策にもつながる点が、述べられている。
図 ブラジルにおける地域ごとの一人あたり水資源量の分布
(出典:Global Energy Network Institute, Brazil & The Water Situation)
*1 http://www.senado.leg.br/atividade/rotinas/materia/getTexto.asp?t=164875&c=PDF&tp=1