米国の環境NGO、Environmental Working Group(EWG)と、ノースイースタン大学の社会科学環境衛生研究所は2017年6月8日、有機フッ素化合物による水道水汚染について共同で実施した調査の結果を報告書にまとめて公表した。それによると、27州でおよそ1500万人が利用している水道水が有機フッ素化合物で汚染されており、その濃度は安全なレベルを超えているという。
この調査で水道水の汚染物質とされているのは、かつてDuPontが調理器具のテフロン・コーティングに使っていたペルフルオロオクタン酸(PFOA)と、3Mがかつて撥水剤のスコッチガードの成分として使っていたペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)で、この2種類の有機フッ素化合物がロサンゼルスやマイアミなどの大都市圏の水道水を異常なほど汚染していることがわかった。PFOAとPFOSは癌や免疫力低下の原因となるという指摘もある。
汚染地域と、汚染源になりうる施設の関係を示すマップ
報告書は、環境保護庁(EPA)が水道ユーティリティから集めた情報にもとづいて水道水がPFOAとPFOSに汚染されているとしている地域と、大量の化学物質流出があったとの情報がある製造施設、民間空港、および軍事基地との関係を地図で示している。このふたつの情報を重ね合わせることによって、水道水汚染の原因がどこにあるかについて、その可能性を示すパターンがある程度見えてくる、とEWGのBill Walkerは言う。
EPAの対応
EPAは現在まで、水道水中のPFOAとPFOSについて強制力のある規制を設けていないが、2016年5月に、これら2物質について飲料水健康注意情報を発表し、安全の目安としてPFOAとPFOSの合計が70 ppt(飲料水1リットルあたり0.07マイクログラム)という健康注意レベルを示した。だが、今後EPAが本格的な規制に踏み切るかどうかは、産業界の負担となる環境規制をこれ以上設けることに消極的なトランプ政権の方針もあって、いまのところ不透明である。