ヨーロッパの水道事業者らの団体、EurEauが2017年5月下旬に発表した報告書[1]によると、硝酸肥料の残留物がドイツの地下水にとって重大な問題となっており、EUの法規制のもとで現在よりも厳しい制限値を設ける必要があるという。この報告書はヨーロッパの水道事業が直面している課題をまとめたもので、そのなかでEurEauのClaudia Castell-Exner副会長は、「最も重要な目標は年間の窒素肥料過剰分を窒素換算で1ヘクタールあたり50キログラム未満に抑えることだ」と指摘している。Castell-Exner副会長はまた、Frieder Haakhとの連名で著した報告書内のある記事で、「共通農業政策(CAP)、硝酸塩指令、農薬承認規則、それに水枠組指令(WFD)を、『水と農業』という観点から再評価し、再構築しなければならない」と述べている。
医薬品による水汚染の問題も
いっぽう、この報告書の別の部分を担当したオランダのMichael BentvelsenとLieke Coonenは、欧州委員会が医薬品による水汚染の問題に取り組むことを求め、「欧州委員会はジクロフェナクとエストラジオールを優先物質リストにまだ加えていない」と非難している。2017年にはいってからいくつかのNGOも、医薬品による水汚染問題解決に必要な戦略的アプローチの策定を怠ったとしてヨーロッパ委員会を非難している。その後、欧州委員会は、2018年初頭を暫定期限とするロードマップを公表した。
EUの飲料水指令と水枠組指令の見直し
EUは現在、1998年の飲料水指令(DWD)の見直しをおこなっている。業界団体のDrinking Water Europeは最近公表した意見書[2]のなかで、この見直しでは各国の規則をより調和のとれたものにすることを目指さなければならないと主張している。ヨーロッパ委員会はDWDの見直し案を2017年末までに提示することになっている。また、2000年の水枠組指令(WFD)の見直しは、2019年におこなわれることになっている。
これについてEurEauのワーキング・グループのAnders Finnson座長は、報告書のなかでこう述べている。「WFDをどのように改めるにせよ、それは共通農業政策(CAP)や他の化学物質規制(たとえばREACH規則や、農薬、殺生物剤、医薬品、および化粧品に関する諸規則)など他の部門の法規制と、目指すところがおなじでなければならない」
[1] Water Matters
http://eureau.org/administrator/components/com_europublication/pdf/37ad5aa917274354636c27938924de66-eureau-layout-for-web.pdf
[2] https://www.europeandrinkingwater.eu/fileadmin/edw/position_papers/May17-Position_paper_on_the_Revision_of_the_Drinking_Water_Directive.pdf