アメリカ・カリフォルニア州内における水資源の保全や飲用水の水質管理を担う水資源管理委員会(SWRCB:State Water Resources Control Board)は2018年3月6日、下水処理水(再生水)の利活用に向けた取り組みの一環として、再生水を地表水の供給源として活用する新規制を採択した[1]。今回の新規制の導入により、水道水源として利用される貯水池の地表水を増やす選択肢が増えることで、地域水道事業者は水源を多様化することができる。
新規制では、水道水源として利用されている貯水池への再生水の流入(補充)を認めるとともに、その再生水の水質基準が設定されている。また、貯水池へ補充される再生水の割合や、上水道の浄化施設にて再処理される前の段階における貯水池での再生水の滞留期間も設定されている。同規制の策定には、パグリックコメントの募集や審査等に2年以上の期間を要した。SWRCBによる規制策定を支援するため、2014年には専門委員会が立ち上げられ、独立した科学的検証や提言などが実施された。その結果、再生水の再利用は公衆の健康を十分に保護しており、安全性の問題はないと結論付けられた。また今回策定された新規制には、再生水の水質基準や再生水の利用条件に加えて、貯水池へ再生水の補充を進めるにあたり地域住民とエンゲージメントを図ることが、地方水道事業者に対して義務付けられている。再生水を水道水源として活用するには、地域住民による安全面での懸念を払拭する必要があることから、住民への教育や信頼獲得が必須である。
カリフォルニア州では近年、気候変動の影響や人口増加に伴い、深刻な水不足が頻繁に発生しており、これを解決する一つの手段として、再生水の利活用が積極的に進められている。2010年州法SB918や2013年州法SB322を踏まえて、SWRCBは、再生水の間接的・直接的な飲用水再利用に向けた法整備の実現可能性の事前調査、検討を開始した。さらに、エドワード・ブラウン州知事(Edmund G. Brown)は2014年1月、カリフォルニア水行動計画“California Water Action Plan”を発表し[2]、地域の自立した水資源を構築し、より持続可能な信頼性のある水資源を供給する上で、再生水の再利用が重要であると位置づけた。
再生水の利活用を具現化するためSWRCBは2014年に、再生水の屋外利用や灌漑利用を対象とした全州レベルの新規制の策定や、地下水への涵養を目的とした要件設定などを実施した。また昨年には、合計7億4800万ドル(約798億9575万円)を超える補助金やローンなどの資金を、下水再生水プロジェクトへ支出した。これらのプロジェクトを通じて、年間4万4980平方エーカーに及ぶ再生水が生成され、カリフォルニア州全体における水供給源の多様化に貢献した。
さらにSWRCBは現在、再生水を上水道システムへ直接流入、または上水道の浄化施設の取水口の上流部分に放流する、直接飲用水の再利用を対象とした新規制の策定に取り組んでいる[3]。再生水の直接飲用水の再利用は、水道水源の供給量の増加につながる一方、公共の健康を確実に保護する必要がある。そのために、研究調査や専門家との協議に基づき、住民による参画を踏まえながら、2023年までに新規制の策定を目指している。
[1] https://www.waterboards.ca.gov/board_decisions/adopted_orders/resolutions/2018/rs2018_0014_with_regs.pdf
[2] EWBJ49号に関連記事有り「米国加州、『カリフォルニア州水行動計画』公表――短期・長期の優先課題を提示」
[3] EWBJ60号に関連記事有り「米国・加州、直接飲用再生水規制の実施可能性に関する報告書ドラフトを公開」