中国広核集団(CGN)の中広核核技術発展股分有限公司(ニュークリア・テクノロジー・デベロップメント)傘下の中国広核達勝加速器技術有限公司は、2018年3月30日に開催された第15回中国国際核工業展覧会の「中国核学会団体標準発表会」で、清華大学と共同で制定した「染色および製紙工業廃水の電子ビーム処理[1]技術規範(T/CNS 8-2018)」を発表した。同規範は、工業廃水の電子ビーム処理分野において世界初となる技術標準であり、同分野における穴を埋める基準となる。同規範の施行日は2018年5月30日。同規範の制定により、染色および製紙工業の廃水処理における電子ビーム処理技術の利用が大幅に促進されていく見通しである。
環境統計年報のデータによると、2015年、中国における工業廃水の総排出量は199億5000万トンに達した。そのうち染色および製紙工業の排出量が占める割合は全体の4分の1に及ぶ。専門家によると、染色や製紙工業から排出される廃水は水量が多く、汚染物質の成分も複雑で、生分解の困難な有害物質が大量に含まれている。こうした廃水に電子ビームを照射することにより、複雑な構造をもつ化学物質を小さな分子に分解できるため、電子ビーム技術を利用して廃水を処理した場合、他の方法と比べて廃水の浄化度が高くなるだけでなく、より高度な基準に適合した廃水の排出が可能になったり、あるいは再生水を再利用したりもできる。
さらに、工業廃水の電子ビーム処理技術は、染色や製紙工業からの廃水の高度処理のみならず、化学工業、製薬工業などの廃水処理や、水質の複雑な工業団地における廃水処理、および特殊な有害物質(抗生物質廃水や菌類の廃棄物など)の無害化処理にも応用できる。技術の進歩に伴い、今後、医療分野での廃水や廃棄物の処理、さらにはゴミ焼却時に発生するダイオキシンの処理などの分野における利用も見込まれている。
同技術規範の起草を務めた中国広核達勝加速器技術有限公司は、現在、工業廃水の電子ビーム処理技術の商用化運用や普及促進を進めており、国内外の大型・中型汚染物質排出企業にソリューションを提供している。
[1] EWBJ63号に関連記事あり「中国で初の電子ビーム照射による廃水処理プラント」