欧州議会の環境委員会(ENVI)は2018年9月10日、人が消費する水の質に関するEU指令案(COM(2017) 753)の修正案を可決した。今後、10月22~25日に開かれる本会議で票決に付される予定である。同法案は、現行の飲料水指令(98/83/EC)を改正・代替するもので、水供給への市民の信頼を高め、飲み水としての水道水の利用を増やすべく欧州委員会が2018年2月に提出した(下記URLで審議経過と主要関連文書が閲覧可能)。
https://eur-lex.europa.eu/procedure/EN/2017_332
この法案を欧州議会で担当するDantin議員(フランス選出、欧州人民党グループ)は「欧州市民の求めに実用的で現実的な答えを提案する明確な立場をENVIが採択したことを嬉しく思う」とし、「これは水へのアクセスや欧州の水供給網の質と機能を改善し、水価格への影響を抑えつつ上流水の汚染物質リスクに対応するものである」と述べた。プレスリリースによると今回、ENVIを通過した法案の概要は次のとおり。
- 鉛、パーフルオロアルキルスルホン酸類(PFAS)、有害バクテリアなど、飲料水中の特定汚染物質の許容上限値を厳格化。内分泌かく乱物質のビスフェノールAとベータ-エストラジオール(50-25-2)について許容上限値を新規導入。新たな懸念となっているマイクロプラスチックの濃度を監視。
- 技術的に実行可能で相応の効果が見込まれる範囲で市街地や公共の場に水飲み場を設けるなど水へのアクセスを改善する措置を講じること、レストランや食堂、ケータリングなどでの無料または低料金での水道水の提供を奨励することを加盟国に求める。
- 社会の脆弱な層のニーズを重視するよう加盟国に求める。具体的には、水へのアクセスが無い、または限定的な層を特定し、供給網への接続方法や他の代替的なアクセス手段について明確に情報提供しつつ、改善方法を導き出す。
水道水への信頼が高まれば、ボトル入り飲料水の消費が減り、家庭の節約額は欧州全体で年間6億ユーロを超えると欧州委員会は見積もっている。これは同時にプラスチックボトルの消費を減らし、プラスチック廃棄物やそれによる海洋汚染の削減にもつながり得る。プラスチックボトルは欧州の海岸で最もよく見られる使い捨てプラスチック製品の一つである。飲料水指令の改正は、欧州委員会が2018年1月16日に発表したEUプラスチック戦略(下記URL)を実行する重要な法的ステップとなる。
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1516265440535&uri=COM:2018:28:FIN