2019年7月31日に開かれた中国山西省第13期人民代表大会常務委員会第12回会議で、「山西省水汚染防止条例」が可決された。同条例は、2019年10月1日より施行される。同条例の概要は、以下のとおりである。
適用範囲
山西省行政区域内の河川、湖、水路、ダムなどの地表水および地下水における汚染防止。
国家標準より厳格な地方標準の制定
- 同条例の第10条では、「省人民政府は、水環境保護の必要に基づき、都市生活汚水、工業廃水における化学的酸素要求量(COD)、アンモニア態窒素、総リンなど3つの主要汚染物質に対して、地表水環境質V類以上[1]の標準を参照し、水汚染物質総合排出の地方標準を制定する」と規定されており、国家標準よりも厳しい地方標準を制定する権利が山西省人民政府に与えられている。
工業廃水に関する規定
- 重点流域の産業配置に対して、計画環境影響評価を実施する(第17条-1)。
- 汾河、桑乾河、滹沱河、漳河、沁河などの主流ならびに主要な支流沿岸におけるコークス化、化学工業、農薬、非鉄金属製錬、製紙、電気メッキなどの高リスクプロジェクトおよび危険化学品倉庫施設の新設を禁止する(第17条-1)。
- 市街地に建設済みの鋼鉄、コークス化、化学工業、非鉄金属製錬、製紙、捺染、製薬など水質汚染が深刻な企業については、段階的に移転または法に基づく閉鎖を実施すること(第17条-2)。
- 水環境の汚染が深刻な旧式の技術および設備の廃止に関する国の規定を厳格に実施する(第19条)。
- 工業企業から排出する水汚染物質については、水汚染物質総合排出地方標準を満たしていること(第20条)。
罰則に関する規定
- 本条例の規定に違反し、工業集積エリアの汚水集中処理施設に排出する廃水に対して、規定に基づく前処理を実施せず、業界の水汚染物質排出標準を満たしていない場合、生態環境主管部門は、是正を命じるか、または生産制限、生産を停止した上での是正を命じ、10万元(約150万円)以上100万元(約1500万円)以下の罰金を併科する。違反が重大な場合には、承認権を有する人民政府による承認を経た上で、業務停止、閉鎖を命じる(第56条)。
なお、「山西省水汚染防止条例」の原文については、以下のURLより閲覧可能である(中国語簡体字)。
http://www.sxpc.gov.cn/276/954/cwhcs12_1127/hywj/201908/t20190801_9415.shtml
[1] 国家標準(GB)の「都市汚水処理場汚染物質排出標準」の最高等級「1級A」における「化学的酸素要求量」の排出制限値は「50mg/L」だが、「地表水環境質標準」の「V類」における「化学的酸素要求量」の排出制限値は「40mg/L」。