カリフォルニア州水資源管理委員会(State Water Resources Control Board)は2016年9月8日、直接飲用再生水規制の実施可能性に関する報告書ドラフト*1を公開した。深刻化する水不足を解消するため、持続可能な水管理戦略を推進する一つの手段として、再生水の利用拡大を同政府は掲げている。その一環として、直接飲用再生水の利用可能性が検討されており、再生水の利用促進に向けた規制の制定へ着手することは妥当であると、同報告にて結論付けられた。
カリフォルニア州政府は2014年、今後5年間において持続可能な水管理戦略を推進するため、「カリフォルニア州水行動計画(California Water Action Plan)」を策定*2、2016年に更新した。同計画では、直接飲用再生水の利用促進が掲げられている。直接飲用再生水の利用を促進する規制は他州では制定されておらず、カリフォルニア州による規制化への動きは全米初の取り組みとなる。同報告書ドラフトに対するパグリックコメントが現在、45日間にわたり募集されている。2016年12月31日までに最終化し、州議会へ提出される見込みである。
直接飲用再生水規制を導入するには、住民の健康を確実に保護するため、更に研究調査を実施し、住民との知識格差を解消することが第一に必要とされる。そのため、同規制を導入する具体的な日程は現時点で未定であるものの、カリフォルニア州政府は、追加研究の実施や知識格差の解消に向けた取り組みと並行して、直接飲用再生水の規制化を進める方針を示している。
同規制の制定に当たり以下の内容を提言している。
- 直接飲用再生水規制の制定を支援する技術作業グループを召集する
- 住民の健康へのリスクに関する科学的知識の現状を示した科学的文献や報告書を検証するブルーリボン委員会を召集する
- 直接飲用再生水の水質と信頼性を評価する新たな手法を開発する
- 地域水質管理委員会(Regional Water Quality Control Board)と共同で、飲用再生水として処理される前の廃水に含有される病原菌を測定する
- 一般的に周知されていない汚染物質を包括的に分析する手法を開発する
- 以下の課題解決に取り組む
- 飲用再生水処理施設の運用事業者を訓練し、認定する
- 飲用再生水を生成する廃水処理施設の性能を最適化する
- 飲用再生水処理施設の水源(取水)となる下水道への有害化学物質の放出を防止または最小限とする水源管理プログラムを強化する
- 飲用再生水プロジェクトの成功と安全性を確保するため、同プログラムを実施する担当部署が、技術力・管理能力・財政力を十分に有するかを確認する
なお、直接飲用再生水の処理フローとして検討されている例は下図の通りである。
図 直接飲用再生水処理のプロセス例
BNR:生物学的栄養塩除去、Tert.:三次処理、BAC:粒状活性炭処理、BAF:生物学的通気ろ過
(出典:Evaluation of the Feasibility of Developing Uniform Water Recycling Criteria for Direct Potable Reuseよりエンヴィックス作成)
*2 EWBJ49号に関連記事有り「米国加州、「カリフォルニア州水行動計画」公表――短期・長期の優先課題を提示」