欧州議会ENVI委員会、水再利用量を2025年までに6倍増する案を支持

欧州議会の社会民主進歩同盟会派に属するSimona Bonafè議員が2019年1月22日、環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI委員会)の審議終了後に語ったところによると、EU内で、下水処理場からの排出水のうち再利用される水の量が、現在の11億m3から2020年代半ばまでに66m3になる可能性がある。この日、ENVI委員会は、この件についての欧州委員会の提案に関するBonafè議員の報告書を賛成多数で採択した。Bonafè議員はこう述べている。「これに必要な投資額は最大でも7億ユーロ(約880億円)で、それによって理論的には、EU内の下水処理場から現在排出されている水の半分以上を灌漑用に再利用することが可能になり、河川湖沼や地下水からの直接取水を5%以上減らすことができる」

欧州委員会が提案している「水再利用の最低要求条件に関する規則(Regulation of the European Parliament and of the Council on minium requirements for water reuse)」案[1]は、農業灌漑向けに再利用される水の水質基準を定めるものであるが、ENVI委員会が採択した報告書は、再利用水の用途を拡大することを求めている。「水再利用の可能性をさらにひろげるために、われわれは加盟国に農業灌漑ばかりでなく工業や環境、アメニティ施設関連などにも再生水を利用する道をひらいた」とBonafè議員は言う。

図 EU各国の再生水利用量(スペイン、イタリアが突出している)
(出典:Report on integrated water reuse concepts[2]

 

上下水道事業者は過度な遵守責任を懸念

欧州上下水道事業者協会連合(EurEau)は、ENVI委員会の報告書を欧州委員会の規則案と比べて「大幅な改善」がみられると評価しているが、それでも、報告書が示している案ではまだ、再生水を必要とするエンド・ユーザーよりも道事業者のほうに過度に遵守責任を負わせているとして懸念を表明している。EurEauで水道事業政策を担当しているBertrand Valletはこう述べている。「欧州議会の案では、再生水のサプライ・チェーンの末端にいるユーザーへの許認可という視点が抜け落ちており、管理負担やリスク評価の責任がすべて水再生施設運営者の肩にかかっている」

Valletはさらに、「われわれは最高水質の再生水をつくることができるが、ユーザーがそれを正しく使わなければ何の意味もない」と述べて、EU各国の政府に対し、エンド・ユーザーの許認可取得義務化に向けて働きかけを強めるよう求めている。

今後の予定

ENVI委員会の報告書は、2019年2月11日に欧州議会の本会議で採択される予定で、その後、議会とEU閣僚理事会との協議の場が設けられることになっている。

[1] 以下より原文をダウンロード可能。
https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/initiative/1774/publication/238837/attachment/090166e5bafed561_en

[2] https://www.susana.org/_resources/documents/default/2-551-wintgens-hochstrat-2006-d19-integrated-reuse-aquarec-en.pdf

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