EUの水枠組み指令を実施する上で最後に必要とされていた一連の優先汚染物質に関する水質基準(EQS)を設定する新法案は、2008年6月上旬の第2読会で欧州議会と欧州閣僚理事会との間で妥協が成立していたが、6月17日、欧州議会は673対10の大差でこの妥協案を承認した。今後、各国政府の署名を以って発効する。
欧州議会はその環境委員会が全会一致で要求していた閣僚理事会提案への修正事項を、(理事会に妥協して)ほぼ拒絶し、閣僚理事会の提案を受入れたのである。同環境委員会は、新たな法律の下での水質基準の適用を受ける優先汚染物質の数を現行の33種から64種に拡大すべきとしていたのである。
こうして、欧州議会と閣僚理事会は当面、優先汚染物質リストを拡大しないことで合意したが、同時に、欧州委員会が2年以内に、追加の候補物質として挙げられた13種の物質について追加すべきかどうか検討を加えることとされた。これらの候補物質には、PFOS、ビスフェノール-A、グリホサート(glyphosate;グリシンともいう)などが含まれている。
また、33優先物質のうちできるだけ多くの物質を、最終的に撤廃を求められる「優先有害物質」に格上げすべきとの要求は排除された。これら33物質は主に農薬(殺虫剤)と重金属で、河川、湖沼及び沿岸水域に含まれている可能性の高いものであり、そのリスクレベルに従って、削減あるいは撤廃されることが義務付けられている。
上記の優先有害物質に対する撤廃目標は「2000年水枠組み指令」の際に設定されたもので、同指令は欧州委員会に対して優先有害物質の排出を「停止」させるための措置を提案するよう要求していた。しかし、2006年に欧州委員会は、化学物質や殺虫剤及び産業汚染抑制に関する現行の抑制対策と導入が予定されている新法で十分で別途法案を作成する必要はないとの見解を示していた。
さらに、今回承認された新法では、この新たなEU法で優先有害物質の撤廃目標が達成できるかどうかを欧州委員会が評価しなければならないとするレビュー期限を閣僚理事会提案の2025年から2018年に前倒しすることに欧州議会は成功した。また、欧州議会は新法の中に、水質基準が適用されない汚染発生源に近い「混合ゾーン(mixing zones)」の定義に関して、(閣僚理事会の提案のものよりも)一層きびしいEUレベルの規則を組入れることに成功した。